「自分を支える5つの力を手にする。それはあなたを守り、輝かせてくれる」
亡くなった俳優のアンソニー・パーキンスは、四十歳になるまで女性が怖かったと自分のことを語っていました。
彼は弱点となっていたこの怖れ(彼はそのことで、支配的な母親を真っ向から責めていたのですが)を克服するため、何年もセラピーに通ったと言います。
「母は怒りっぽかったわけでもないし、いじわるだったわけでもありません。
ただ、非常に意志が強くて、私の上に君臨していたというか・・・とにかく私の生活のすべてをコントロールしていたんです。
私がどう考えるべきか、どう感じるべきかということもね。
『何の本を読んでいるの?』
『あら、どこへ行くの?』。
母としては責任を果たしているつもりだったのでしょうが、実際にやっていたのはコントロールだったんですよ」
テレビ俳優でタレントのスザンヌ・ソーマーズは子ども時代のことをこう綴っています。
「私が生まれた日、父はべろべろに酔っていたそうです。
当時、父はすでに『嫌われ者』でした。
自己嫌悪の裏返しで周囲を攻撃していました。
学校の行事に姿を見せたと思ったら、シスターに向かって卑猥な言葉を投げつけたり、日曜の礼拝でもたびたび、司祭の説教の間にまぎれもない父の声が教会の後ろのほうから聞こえてきたものです。
大声で司祭を罵る声が。
私は赤面し、父の起こした騒ぎが自分の過ちみたいに感じて身の置き所がありませんでした」
この二つの話は、子どもがまさに自分というものの感覚や自分の価値を育て始めるはずの時期に、人としての境界や存在そのものをおびやかされるような家庭環境を描き出しています。
その年代の子どもは世界中どこでも、次のような疑問に答えを出そうと必死なのです。
「私は誰?私はお母さんという人間の延長?お父さんの所有物?それとも別の人間?」
「私には価値がある?私は愛されている?私は好きになってもらえる?」
「私は何を考えて、何を感じている?私が内心の不安を親に話したら、どんなことになる?」
「どんな時ノーと言っていいんだろう?それとも好きでいてもらうためにはいつもイエスと言わなきゃダメ?
だってもしも私を好きでいてくれなかったら、おまえなんか知らないよと言われてしまうだろうし、親に捨てられたらきっと私は生きていけない」
こうした核心的な問いかけは自己というものの感覚をつくりますが、この問いに対する答えは、周囲にいる人がその子をどう扱うかによってかなり決まってきます。
冒頭にあげたような家族では、子どもたちは周囲から否定的な答えや混乱したメッセージを受け取ったり、あるいは何の答えももらえないという最も力をくじかれる扱いを受けます。
大好きで、生きていくため頼りにしている相手から何も返ってこなければ、この問いかけは灯りのない自分の内部でこだまし、子どもは幼い理屈を総動員して答えを探り当てるしかなくなるのです。
愛して慈しんでくれる母親や父親と出会った子どもは、大切にされた記憶を内面に取り込んで、それをもとにして自分自身に対する基本的な考え方や態度を形作ります。
もしそれがないとしたら、今からこうした考え方や態度を自分で学んでいけばいいのです。
自分の内面にある、自分を支える環境―それがインナーアダルトであり、核となる5つの力によって育っていくものなのです。
生き方を変えるのは、別の人間になることではありません。
あなたが変えるのは、特定の考え方と行動。
つまり自分への見方と、痛みを手当てする方法を変えるということなのです!