[過去の喪失は、今の私にどう影響しているだろう?]
過去と現在をつなげることは、情緒的なプロセスというよりも、論理と洞察に導かれたプロセスです。
過去と現在の生活との間に原因→結果のつながりを見つけることで、進むべき方向が見えてきます。
そのことによって、「今、ここ」にもっと集中できるようになります。
あなたが取り組むべき課題がはっきりしてきます―痛みが影響を与えているのはどんな場面か、健康的な対処ができないのはどんな場面か、どんなことを新しく学ぶ必要があるか、などです。
「私の過去は、今の私にどのように影響しているのだろう?」という質問に答える作業を進めるうちに、どんどん「今、ここ」に集中していきます。
●次の問いを読んで、思い浮かぶことを書き出してください。
・私の過去は、自分自身についてのイメージに、どのように影響しているだろう?
・現在の人間関係に、どのように影響しているだろう?
・職場での私に、どのように影響しているだろう?
・親としての私に、どのように影響しているだろう?
書いてみることを通じて防衛がとれ、もっと自分に素直になれるはずです。
このステップに取り組むうちに、それぞれの質問にさらにくわしく答える必要が出てくるでしょう。
その為のヒントとして、もっとつっこんだ質問の例をあげておきます。
1.子どものときからずっと孤独の中で生きてきたことは、自分自身についてのイメージにどんな影響を及ぼしているだろう?
2.人間関係にどんな影響を及ぼしているだろう?友人との関係では?子育てでは?
3・子ども時代に失敗をひどく恐れていたことは、今の仕事上での自分にどう影響しているだろう?遊びではどうだろう?子育てでは?
4.子ども時代にいつも承認を探し求めていたことは、今の子育てにどう影響しているだろう?人間関係には?仕事上では?
5.子ども時代にひとりぼっちで幻想にひたって長い時間を過ごしていたことは、今の自分にどんな影響を及ぼしているだろう?自分の理想には?友人の選び方では?
6.空想の世界にいるときしか安全を感じられなかったことは、私の職業選択にどんな影響を及ぼしているだろう?
7.いつも怖れとともに生きてきたことは、自分自身や、人間関係や、仕事や、子育てにどう影響しているだろう?
8.怒りを表わすのが安全でなかったことは、自分自身や、人間関係や、仕事や、子育てにどう影響しているだろう?
9.感情が凍り付いた母親、私のすることに決して満足しない父親のもとで育ったことは、今の自分にどう影響しているだろう?
こうして、子ども時代と現在とを原因→結果のつながりとして見ていくことが必要です。
私達はよく、生活の中のある分野について、きちんと探らずに最初から決めてかかってしまいます。
たとえば、「働くのはよいこと」で「私は仕事で成果をあげている」から、その分野については考える必要などないと決めてしまうのです。
けれどもこのステップ2で自分にさまざまな質問を投げかけ、今の行動パターンと過去とを結びつけることによって、痛みを長引かせていたやり方に気付いたり、自分の助けになるのではなく害となるような行動を繰り返していた事実に気づくことが多いのです。
「私がかつて学校の活動に夢中になって寂しさを忘れようとしていたことは、今の仕事ぶりにどう関係しているだろう?」と自分に尋ねてみると、学生時代と同じやり方で仕事に没頭して自分自身から目をそらしていたことがわかるかもしれません。
一週間、毎日十六時間も働いて、これだけがんばったごほうびだとでもいうように食べ物を詰め込んだりアルコールを流し込んだり、浪費に走ったりしているということがよくあります。
仕事面で優秀なのはまず間違いないでしょうが、それよりも私達が確実にやってきたのは、自己否定感の重荷を増やすことだったかもしれません―体重が5キロ増え、飲酒運転でまたひっかかり、クレジットカードの負債が増えて、クローゼットの中は必要でもなくほしかったわけでもない洋服でいっぱいになるというわけです。
過去と現在をつなげるステップは私達に洞察を与えてくれますが、同時に感情も呼び起こします。
たとえば、「四十五歳の今でも決断するのが怖いのはなぜだろう?」と考えることを想像してみてください。
自分がどんな人間に思えるでしょう?
あるいは、あなたが人の話に耳を傾ける方法を身につけていないとしたら?
それによってパートナーとの間にもちあがっている問題のことを考えたら?
また、あなたが自分のニーズを探ろうとすると、どんな気持ちになるでしょう?
こうした質問に答えることは、たくさんの痛みをもたらします。
あるカウンセラーのクライアント、アダルトチルドレンのシェリーはこんなふうに言いました。
「子どもの頃、自分のために作り上げた幻想が尾を引いて、ずっと私は夢みたいな目標ばかり描いていたんです。
それがわかったのは、とてもつらかった。
結局は自分で決めることが怖かったんだと気づいてしまったし、今だって私は怖いんです!」
もちろん、過去と現在のつながりがわかってよかったと感じることは多いでしょう。
それでも、わかったことで怒りや悲しみが生まれてくるのは自然だし、今までのパターンを変えたいと考えれば怖れもわいてくるものです。
こうした感情を感じ、なぜその感情が生まれたかに気付き、その痛みを表現し癒していくことが必要なのです。