私たちの心は、どのような場面で傷つくのでしょうか。
その主な場面をみてみましょう。
信じていた人に裏切られたとき
親友と思っていた人が、他の人に自分のことを悪く言っているのを知った時などです。
あるいは、信じている人に悩みを相談したら、そのことを他の人に漏らされてしまったときなどです。
夫を信じきっている妻が夫の不倫を知り、夫婦関係を修復できないほどの傷を負うことがあります。
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努力や誠意が踏みにじられた時
努力や誠意が踏みにじられたり、認められないと、人は傷つきます。
ある女子学生は、次のような傷つき体験を語ってくれました。
中学の時、卒業文集の係になって、表紙の絵を描く人がいなかったので、絵は不得意だけど、係の責任感から一所懸命描いて、先生に提出しました。
ところが、先生は一目見ただけで「こんなのじゃ、だめよ」と言ったというのです。
子どものとき、何かにがんばっている時に、親から「あなたが続くわけないよ」と言われたことがずっと傷になっている人もいます。
いじめられているときに、「気にするな、見返してやれ」と担任の先生に激励された言葉に、深く傷ついたと語る人もいます。
いじめに必死に耐えているつらさを分かってもらえない、教師も自分を助けてくれない。
そうとしか感じられなかったというのです。
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触れられたくないことに、触れられたとき
自分の心のなかにそっと隠しておきたいこと。
そのことに触れられると、傷つきます。
Aさんは、自分の下ぶくれの体型を気にしていたのですが、友達と出産の話になり、「あなたは安産型だからいいわね」と、言われたことが傷になって忘れられません。
Bさんは、幼稚園での踊りの発表会の時に、すねて舞台に上がれませんでした。
母親はBさんの子ども時代を語るとき、必ずこのことを話題にします。
そのたびに、彼女は表面では笑いながら、密かに傷ついていたといいます。
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失敗や能力のなさが明らかにされたとき
失敗を笑いものにされたり、能力が無いと評価されると、心が傷つきます。
あるとき、学生が泣きながら研究室に飛び込んできました。
実習で自分が作ったものを、先生ができの悪い見本としてとりあげ、みんなの笑いものにされたというのです。
Cさんは転職のことで悩んでいました。
Cさんは、会社の重要なプロジェクトの一員に選ばれ、張り切って仕事をしていたのに、とちゅうで一人だけプロジェクトからはずされてしまいました。
チーフに理由を聞いても「上からの方針だ」と言うばかりで、教えてくれません。
自分に能力がないと評価されたようで、ひどく傷つき、会社をやめたいというのです。
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責められた時・非難された時
人から責められたり、非難されると傷つきます。
良心的な人ほど非難を自分の責任として引き受けてしまい、深く傷つきます。
何かをしたときにいささかも不十分な点がない、などということはあり得ません。
ですから、他の人から責められたり、非難されると、どこか心当たりがある、ということになります。
その心当たりがあるだけに、傷ついてしまうのです。
中学の時、ある先生が「自分に悪いところがあったら遠慮なく書いてくれ」と求めました。
それで、いろいろと欠点を書いて出したら、次の日、その先生はひどく怒りました。
「悪いところを指摘してくれ」と言う人がいますが、よほどの人でない限り、これは「ほめてくれ」という意味なのです。
三つほめて、批判はせいぜい一つにとどめるのが無難なようです。
人のなかでの恥ずかしい出来事
人が見ているところで転ぶなど、ちょっと恥ずかしい出来事なら笑いとばせます。
しかし、いつまでも心を傷つける体験になることもあります。
OLのSさんは、生理になると仕事に集中できません。
それは、学生時代のテニス・サークルの合宿での出来事に由来するというのです。
合宿での夕食後、開放感で盛り上がっていたので、みんなでイス取りゲームをしました。
そのうちに、メンバーの一人がイスの汚れに気づきました。
それが血であることが分かって、誰かケガしていないかということになりましたが、結局、自分の生理の血がジーパンから滲み出していることが分かりました。
男子も一緒だったので、この体験にひどく傷ついたと言います。
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軽く扱われたとき
「人から軽く扱われた」と感じた時、私たちは傷つきます。
合コンで男子が順番に女子にいろいろ聞いてきたときに、自分だけほんのちょっとの質問で終わってしまい、次の人に移ったりすると傷つきます。
二人で話をしているところへ別な人が通りかかって、相手の人が自分との話を打ち切ってその人のほうへ話しかけると、少し傷つきます。
思い余って相談したのに、簡単に結論を言われると、自分の悩みが軽く扱われたように感じて傷つきます。
進路について父親に相談したのに、「君のことだろ、自分で決めたらいいよ」と言われたことで傷ついた、と語る学生もいます。
リストラの対象とされた場合なども、生活への不安や会社にとり不要と評価されたことで傷つくばかりではありません。
使い捨てのように軽く扱われるということに対して、人間としての誇りが傷つくのです。
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自己欺瞞を自覚したとき
嘘をついたり、自分を偽ったり、逃げたり、言い訳したりすると、そうしている自分に傷つきます。
人前では演技し、家に帰ると別な自分。
こうした自分の欺瞞性のために自己嫌悪し、傷ついている若い人は少なくありません。
拒食症の人は、食べた後、トイレで吐いている自分に傷つきます。
過食症の人は、食欲をコントロールできない自分に傷ついています。
大人も、ある会合が重荷に感じられ理由をつけて欠席した時など、自分の行動に傷ついていることがあります。
こうした傷つきのイライラを、暴力や自傷行為として表出する人もいます。
ふがいない自分、強くなれない自分を、自分で傷つけている姿だといえます。