楽な人付き合いの構築実践法

楽な人付き合いのいろは

あらゆる生物は生存欲求を持っています。

特に人間を含めて集団で生きる生物は、生存の可能性を高めるために、集団化することを選択しました。

集団を形成することにより、外的から襲われるリスクを軽減したり、配偶者を見つけやすくしたり、さらには共同行動することで死を遠ざけるメリットを発生させるのです。

しかし、これらの生物には弱点があります。

それは「孤立」は「死」を意味するのです。

人間で言えば、学校で孤立した場合、いじめに遭う可能性が高まり、精神的、暴力的な被害を受ける恐れが出てきます。

職場で孤立したとすれば、職場での評価が下がり出世の可能性が低くなります。

それは結果的に収入の減少をもたらし、生活に支障が出てきます。

恋愛においては、異性との付き合いがなければ、子孫を残すことができません。

時間を共に過ごせる家族が存在しないということですから、孤独な生活を余儀なくされてしまいます。

それはとても恐ろしいことです。

人間は孤独に対してとても臆病な生物なのです。

「孤立」の予兆は「批判」から始まります。

「批判」とは「あなたとは合わない」というメッセージです。

それは裏を返せば、その人を集団の一員として認めず、孤立して、さらには死んでもかまわない、というメッセージを意味しているのです。

もちろん、批判をしている人には、相手に死を意識させているという認識はないでしょう。

しかし、少なくとも批判された相手は無意識に孤立を感じ、死を恐れることになります。

そういった自覚を今まで皆さんは持っていたでしょうか。

もし持っていなかったら今すぐ持ちましょう。

特に問題となるのは、その人の本質に近いところを批判してしまうことです。

具体的には、相手の仕事や人生哲学を否定することです。

仕事とはその人そのものを表します。

多くの人は人生の半分以上を仕事に費やしています。

その仕事を否定するということは、その人の人生の半分を否定してしまうことになるのです。

否定された相手は「あなたの人生の半分は無駄なもので、私はあなたを集団の一員として認めない」というメッセージとして受け取ります。

そして、自らの生存を脅かす存在である発言者に嫌悪感を抱くことになるでしょう。

今度は、それを告げた発言者を孤立させようと攻撃してくるはずです。

批判することで、相手の批判が返ってきて、結果的には自分の存在価値が下がってしまうのです。

コミュニケーションにおいては、相手の人生哲学を否定することにもかなりの危険が伴います。

人は誰でも生き方に信念を持っています。

その信念は長い年月をかけて熟成されたものです。

相手の人生哲学がたとえ自分とずれていたとしても、それは尊重しなくてはなりません。

なぜなら、その哲学を否定してしまうと、その人が長い年月をかけて熟成してきた全ての時間を否定してしまうことになるからです。

相手は仕事を否定されたときと同じく、激しくあなたを嫌悪することになるのです。

批判については人格と切り離すことが大事です。

その人と遠い位置にある事柄に関しては批判してもさして問題はありません。

しかし、その人と深いつながりのある物事に関しては、その人に死の意識を芽生えさせてしまいます。

これは必ず胸に刻んでおいてください。

人間は自分を集団の一員として認め、自らの生存可能性を高めてくれる人を欲しています。

つまり自分を肯定されたがっているということです。

具体的には、褒められたい、賞賛されたい、共感されたい、好意を持たれたい、と言う願望を常に持っています。

なぜなら肯定されるということは、集団の一員として認められることを意味し、死からより離れることができるからです。

こういった意味で、人間関係を築く技術の基本は「いかに相手を肯定するか」、これにつきるのです。

コミュニケーションに関する技術は数多くあります。

あふれるコミュニケーションに関する技術に流され混乱してしまったら、まずはこの基本原則を必ず思い出してください。

人間とはロボットではなく感情を持った動物なのです。

その感情は極めて原始的にできており、単純に生きたいという欲求から成り立っているのです。

そして、生きるために人間は集団化し、その結果孤立を恐れているのです。

相手から好かれたい、仲良くなりたいと思ったら、ただちに批判、嫌悪、悪口を控えることです。

そして、褒める、尊重する、賞賛する、共感する、好意を示すといった能力を高めていきましょう。

自問自答してみてください。

果たして私は今日出会った人をしっかりと肯定することができたのだろうかと。

もしそれができていなかったら、それは人付き合いを築く技術が低いことを意味するのです。

・人間は集団から排除されることを何より怖れる
・集団として認めてくれる人を欲している

この2点をしっかりと胸に刻んでおきましょう。

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初対面の人付き合い

これからいよいよ実践的な話に入ります。

ただ、あくまでメンタルがその土台にあります。

ここからは心構えの話は少なくなりますが、決して忘れることのないように気をつけてください。

人付き合いは初対面から始まります。

初対面は人間関係で最も緊張が走る瞬間です。

相手がどんな人間かも解りません。

仲良くなれるかな?

嫌われないかな?

と心配になってしまいます。

そこで、まずは初対面の方と一時間から二時間ぐらいは会話を継続させる方法を学んでいきましょう。

これからお伝えする内容をしっかりとマスターしていけば、初対面の人との会話が得意になるはずです。

まず初めに、以下の4つの流れを覚えましょう。

  1. あいさつ
  2. 名前を名乗る、名前を聞く
  3. 天気の話(変わった天気のときのみ)
  4. 住んでいるところの話題

暗記はできましたか?

それでは一つ一つ解説していきます。

1.あいさつ

まず人間関係の基本はあいさつです。

このあいさつがしっかりとできるか否かで第一印象が決まります。

会話が苦手でもあいさつは誰でもできます。

あいさつができないということは、コミュニケーション能力を高めようという意思が弱いことの証です。

必ず笑顔でにこやかに、焦らずゆっくりとあいさつしましょう。

あいさつは相手の目を見て、軽く会釈します。

そして、何より必ず「先」にあいさつするようにしましょう。

この「先」にあいさつすることができない方がとても多いです。

あいさつを「先」にするということは、自分が相手に人間関係を築きたいというサインを送ることです。

「先」にすることで、どんどん相手に好意を示していきましょう。

2.名前を名乗る 名前を聞く

あいさつが終わったら、同じく先に名前を告げましょう。

「川島です。よろしくお願い致します」とにこやかに告げます。

自分の名前を告げ終わったら、今度は相手の名前を聞きましょう。

このとき、相手が名前を告げたら必ず復唱するように心掛けてください。

名前を復唱するということは、その人を仲間と認めたいという願望をそれとなく伝えることになります。

名前を復唱することも癖です。

これは繰り返し練習することで自然とできるようになります。

名前は必ず復唱する。

これを必ず心掛けてください。

できれば会話の中でも相手の名前をたくさん呼んであげましょう。

名前は相手の存在そのものを意味します。

自分の言葉の中に含めてあげることで、あなたを認めているのだということをどんどん示していきましょう。

3.天気の話題

自己紹介の次は天気の話題です。

ただ、これは位置づけとしては例外的なものです。

春一番が吹いた日、台風が来て風がものすごく強い日、雪が降った日など、いつもとは違った天気の日にその話題を振ると良いでしょう。

それ以外はあまりにも使い古されたコミュニケーション方法なので、「今日の天気は良いですねえ」などと言いますと逆に不自然になります。

ありふれた天気ならその話題は控えた方が無難でしょう。

4.住所の話題

さてここからが問題です。

あいさつをして、名前を告げ、必要に応じて天気の話題を振りました。

ここまでは多かれ少なかれ、初対面の方との会話の流れが同じことが多いでしょう。

しかし、次の話題で悩んでしまう方が非常に多いのです。

ここで、次の話題としては漠然とした住所の話題が一番良いでしょう。

漠然とした聞き方であれば、住所の話題を振って嫌がる人というのはほとんどいません。

「〇〇さんは、今日はどちらからいらっしゃったのですか?」

「〇〇さんは、どこにお住まいですか?」

と、気軽に聞いてあげましょう。

そして、もし相手の住所が自分と近かった場合は大いに喜んでください。

コミュニケーションにおいて、物理的な距離というのはとても重要な意味を持ちます。

なぜなら、物理的な距離が近いほどその人に親近感を抱き、好意を持つという性質があるからです。

家が近い場合は「近いですね~」と嬉しそうに言いましょう。

相手もきっと喜んでくれます。

もし、その住所が知らない場所であるなら、遠慮なくその場所がどこにあるのか聞きましょう。

「そこは何線沿線ですか?」とか、「東京の西の方ですか?」と、位置を確認します。

注意点としては、初対面では細部まで聞かないことです。

ある程度漠然とした位置を聞き出すぐらいで留めておきましょう。

大抵、住所の話題を振ると相手も自分の住んでいる所を聞いてきます。

このときはどんどん教えてあげましょう。

コミュニケーションとは開示の連続です。

知られることを恐れていては何もすすみません。

人間関係を築きたいと感じた人に関しては、どんどん自分の情報を伝えてあげましょう。

相手がおとなしい人だと質問が返ってこない場合があります。

このときは自分から自己開示をしましょう。

そして、相手の自己開示と自分の自己開示はバランスを保って、同等であるように心掛けてください。

初対面からの流れを押さえれば、とりあえず初めの3分間は誰でもスムーズに会話をすることができます。

それでは次の段階としてはどのような話題が適しているのでしょうか。

人間は自己開示が進めば進むほどお互いに好意を持つものですが、初対面の場合はまだ警戒心が強く、ある程度表面的な話題を話す方が良いでしょう。

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人付き合いでの話題展開の四つのSTEP

そこで初対面からの話題選択法の四つのSTEPに着目して、話題を展開していきます。

●STEP1

初対面からの話題選択法の最後は住所の話題で完結しました。

この住所の話題というのがミソなのです。

住所の話題というのは実にいろいろな話題へと展開が可能です。

具体的には住所に関連した以下の話題につなげていきましょう。

1.ご当地話

2.旅行の話

3.食べ物関連の話

具体的な質問の一例は以下のようになります。

  • 〇〇さんの住んでいらっしゃるところで、面白い場所はありますか?
  • 〇〇さんは旅行が好きですか?
  • 〇〇さんはどの町によく行きますか?おいしいお店とかご存知ですか?

●STEP2

ここまではある程度パターン化できますので、練習すれば誰でもできるようになります。

しかし、残念なことに、ここから先は会話の流れをパターン化することが難しくなります。

突拍子もないことから全く違う話題に飛んでしまい予測がつきません。

雑談というのはそもそも、形式張ってするものではありませんので、それは覚悟する必要があります。

ただ、展開としては以下に挙げる話題に派生することが多いです。

話題として盛り上がり易いですので、話題に困ったときのために次の話題を暗記しておきましょう。

4.スポーツの話題

5.趣味の話題

6.音楽の話題

7.本の話題

8.身に付けているものの話題

9.目に見えるものの話題

ここで説明がいるのは身に着けているものの話題と、目に見えるものの話題でしょう。

身に着けているものの話題というのは、ほぼはずれがありません。

誰でも好き好んで自分が嫌いな洋服や小物を身に着けて外を歩きませんよね?

その人が身に着けているものは、その人が良いと思っているからこそ身に着けているのです。

それを褒めて、興味を持って質問してあげると、相手が好きなものに興味を持っていることを示すことになり、相手は好感を持ってくれるのです。

相手を見たときに、どんどん相手の身に着けているものに興味を持って質問していきましょう。

次に目に見えるものの話題についてですが、目に見えるものの話題とは、今視界に入っているもの全てを指します。

例えば、二人の目の前にちょっと変わった帽子を被っている風変わりな女性がいたとします。

そんな女性がいればしめたものです。

「あの人は普段何をやっているんだろうね。どう思う?」

「あんな帽子はどこで売っているんだろうね?」

「世の中変わった人がたくさんいるね。〇〇さんの周りにも面白い人がいますか?」

と質問してあげると良いでしょう。

話題に困ったらとりあえずは目に見えるものの話題を振ってみましょう。

●STEP3

それでは次の段階に移りましょう。

ある程度会話をしてお互いの自己開示が進んできたら、いよいよ核心部分に入っていきます。

ここから先はその人の根本的な部分に入ってきます。

ある程度距離を測りながら、相手のペースに合わせて話題を振っていきましょう。

人間は絶えず肯定されることを望んでいます。

何より最も肯定されたいと望んでいることは、自分の価値観であったり、家族であったり、仕事であったり、自分が歩んできた道、そして夢です。

この話題になったら最大限肯定するように心掛けましょう。

こういったその人の根本に関わる話をするときは、話をする方も勇気がいります。

ですので、自分に対してそこまで語ってくれたことに感謝し、その心意気と、その人が歩んできた人生、そして今まさに持っている価値観に共感してあげましょう。

具体的には以下の話題を振っていきます。

10.仕事の話

11.家族・友人の話

12.恋愛の話題、夫婦の話題

13.価値観に関わる話(人生哲学、夢、好きな言葉等)

14.悩みの相談

ここで、仕事の話題について言えば、お互いがスーツであるとか、ビジネスシーンであれば、自己開示が進んでいなくても初めから話すことが多くなるので、問題はありません。

ただ、仕事というのは多かれ少なかれ、損得がからみ厳しい雰囲気になることが多いです。

プライベートであれば、話題としては少し後に持ってきた方が無難でしょう。

注意しなくてはならないことは、原則的に相手の仕事を全肯定することです。

相手の仕事を否定することは相手の存在を否定することと同じです。

相手の仕事の良い面をどんどん見つけて、肯定するように心掛けてください。

恋愛の話は特に同年代であれば、まず間違いなく盛り上がる話題です。

彼女、彼氏がいるといった話題はいつの時代でもはずれのない王道の話題でしょう。

もし、あなたが既婚者なら、奥さんの話や、子どもの話をしてあげると良いでしょう。

価値観に関わる話は仕事と同じく慎重にいきましょう。

相手の夢も原則全肯定です。

それがあなたから見て達成不可能であったとしても、夢を持つのはその人の自由です。

相手の人生は他人が決めるわけではないのですから、それはそれとして賞賛してあげましょう。

悩みの相談については、自分から話題を振るのではなく、相手が自然と話してくれたときに全力で傾聴してあげましょう。

相手はアドバイスを求めているわけではありません。

ただ聞いて同調して欲しいと思って話している場合がほとんどです。

相手が悩みを打ち明けてくれたら、自己開示してくれたことに感謝し、その心に共感してあげましょう。

話をしていく中で相手の仕事、家族構成、夢など、相手についてはほぼ知ることができました。

実は、そんな段階になると会話に困ってしまう方がたくさんでてきます。

会話とは自己開示できる情報があるからこそ成り立つのです。

それが終わってしまうと、話すことがなくなり、何を話せばいいのか悩んでしまうのです。

では、最後の仕上げとして、お互いのことを話し尽くしてしまった場合、一体何を話題にして話せば良いのか説明していきます。

ずばりそれは、お互いが取り組むべき課題を設定することです。

例えば、お互いに恋人がいなかったとします。

そんなときは一緒に恋人を作る作戦を練って、実際に出会いの場に行こうと話し合ったり、旅行に行く計画を立てたりします。

仕事であれば職場の人間関係が良くなるにはどうしたら良いのかと相談します。

恋人同士でマンネリ化しているのであれば、一緒に料理を覚えるという目標を立てるのも良いでしょう。

集団というのはただ単に集まれば集団化するわけではありません。

そこには集団となることで生まれるメリットが必要なのです。

このとき共通の課題・目標があれば、集団はより強固なものとなります。

お互いに長時間接していて、今さら話すことはないという状態になったら、漫然と時を過ごすのではなく、ぜひとも、その方たちと一緒に取り組むべき目標を作っていきましょう。

以上、ざっとですが、初対面から、自己開示が進んだ状態までの話題の選択法について説明しました。

まとめのチェック

自分の力がどれぐらいなのかは下記チェック項目で判別しましょう。

もし、チェックした項目でうまくいっていないところがあったら、できれば自分の課題として設定し、一つ一つ丁寧に取り組んでください。

初対面からの四つの流れを暗記したか

  • あいさつを先にしたか
  • あいさつは明るく笑顔で告げたか
  • あいさつをするときに相手の目を見たか
  • 名前を自分から告げたか
  • 相手の名前を復唱したか
  • 相手の住んでいるところをスムーズに聞けたか
  • 物理的な距離が近い場合は嬉しそうにしたか
  • 知らない住所の場合は遠慮なく聞いたか
  • 住所の話題から1~3の話題に誘導することができたか
  • 1~3の話題から4~8の話題に誘導できたか
  • 自己開示を低から高に誘導できたか
  • お互いの自己開示が終わったら、共通する目標を設定できたか

ここまでは話題の構造にあたります。

とりあえず、このチェック項目が全てできるようになれば、話題に困ることはないでしょう。

ただ、これはあくまでも会話の構造を学んだ段階です。

さらに、その一つ一つの話題の中で好意を持たれるようにしていく必要があります。

今まで学んだことは、ビルの建設で言えば骨組みを作った状態です。