笑顔が周囲を優しくするとは
笑顔が周囲を優しくする心理
心理学の中に、感情のジェームズ・ランゲ説というものがあります。
それは標語的に言えば、「悲しいから泣くのではない。泣くから悲しいのだ」と、いうものでした。
これは全くばかげたこととしか思えませんが、いろいろな科学的知見がこの説の正当性を裏付けているのです。
たとえば、表情研究の第一人者であるポール・エクマンは顔の筋肉の一つ一つをコントロールする訓練をして、いろいろな感情の表情をつくるという実験をしています。
すると、たとえば怒りの表情をすると心拍数が10以上も上がり、両手の体温が高くなるなど、表情をつくるだけで自律神経系に変化が生じたのでした。
こうしたことから、エクマンは、感情を生じさせないでその表情だけを作ることなどできない、と述べています。
つまり、笑顔を作れば、明るい気分にならずにはいられないのです。
意識的に笑顔をつくることで、気持ちが明るくなるのです。
私は毎朝、起床する前に、笑顔を作るようにしています。
すると、「今日も仕事か、嫌だな」と思う気持ちが、「今日もなんだか楽しそうだぞ。がんばろう」という気持ちに置き換わる実感がします。
自分がどのような感情を抱いているかで、他の人や場面に対する見方が変わります。
自分が暗い気持ちだと、他の人を批判的、否定的に見てしまいがちです。
そのために、いっそう暗い気持ちが強まり、厭世的な気分になります。
自分が明るい気持ちだと、周囲の人も優しく、物事もたやすく成し遂げられそうな感じがします。
それで、元気が出て、楽観的な気分になります。
笑顔を作ることで、このように明るい気分の好循環が生まれます。
楽しいと思えなくても、気持ちが重たくても、ぜひ笑顔を作ってみて下さい。
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人は笑顔を見たい生き物
能のなかのミラーニューロンと呼ばれる神経細胞によって、ある感情状態の人を見ただけで、実際にその感情を体験したときと同じ脳の部位が活性化することがわかってきました。
つまり、私たちは、にこにこ顔の人を見れば明るい気分になるし、沈んでいる顔を見れば沈んだ気持ちになるように脳ができているのです。
これによって、ある人の気分が周囲の人に伝染していくのです。
ですから、自分ができるだけ笑顔でいることは、周囲の人に対する責任でもあるのです。
Nさんの田舎では、還暦を迎える年に、卒業した中学校の大規模な同窓会が催されます。
この同窓会に出席したとき、「学生時代、君の笑顔を見たことがなかったが、今は穏やかな笑顔をしているので安心した」と、担任だった教師や友達から言われたものでした。
Nさんは幼児期に両親を失い、親戚の家で育ちました。
養母はとても厳しい人で、今でいう児童虐待に当たるようなことも少なからずありました。
その上、たった一人の肉親で、自分を犠牲にしてNさんをかばってくれた姉とも途中で離ればなれになり、その姉も思春期に亡くなりました。
このような生い立ちでしたので、子どもの頃は泣いている顔は見せても、笑顔を見せたことはなかったのです。
成人しても、Nさんの笑顔は、どちらかといえば、不安や緊張を隠すカモフラージュでした。
でも、それを続けているうちに、明るい心を持てるようになり、周囲の人にも温和な雰囲気をもたらすようになりました。
私たちの顔は年を経るとともに、主要な感情を刻み込むようになります。
ふだん笑顔でいれば、柔和な表情が刻み込まれます。
緊張していれば、硬直した表情が刻み込まれます。
暗い表情でいれば、暗い表情が刻み込まれてしまいます。
赤ちゃんは不快な感情よりも笑顔の感情を正確に認知しやすく、笑顔を好む性質があるのだと考えられます。
人は誰でも笑顔を見ていたいのです。
できるだけ笑顔でいることを心がけることです。
気分が滅入ってどうしても笑顔でいれないときは、正直にその理由を伝えることです。
「ごめん、今は無理。悪いけど、そっとしておいて」
周囲の人は、あなたが笑顔を取り戻せるまで、きっといたわってくれるはずです。
●まとめ
笑顔で明るい気分になろう。
笑顔で接してみよう。