多くの大人は、心の中の痛みを生活から切り離し、目の前で大きな喪失が起きない限り、どうにか日々を暮らしています―子どもが一人残らず巣立っていったり、重い病気になったり、親友や家族の死、失業、大事なキャリアをダメにするなどの喪失を経験するまでは。
多くの女性たちは、更年期に入ると身体的な不調と閉経が象徴するものとが重なって、非常に大きな喪失感を味わいます。
男性にとっても女性にとっても、現在の生活で直面した重大な喪失は、コップの水をあふれさせる最後の一滴となる場合があります。
アダルトチルドレンをかかえているキャメラは、身体的な虐待を受けて育ち、その後、建築会社の部長となりました。
アダルトチルドレンの彼女は子ども時代の痛みを心の片隅に押し込め、しっかりと鍵をかけて生きてきました。
自分が築いた家族のことで一生懸命で、姉妹や親たちとは距離をとっていました。
アダルトチルドレンの彼女の人生は過去とはすっかり分断されていたのです。
そしてある日、彼女の一番上の娘が事故で亡くなりました。
それから半年後、彼女の父が死を迎えました。
三週間たって、アダルトチルドレンを抱えていたキャメラは初めての自殺未遂をします。
どんな人にとっても、子どもを亡くすというのは人生の中でもっとも悲劇的な出来事です。
それに加えてアダルトチルドレンのキャメラは、これほどの痛みに対処する方法をまったく知らず、心の中に何の支えもありませんでした。
一方、父親に対しては暖かい気持ちを持っていなかったものの、その死は、今まで手際よく隠しておいたはずの子ども時代の痛みを解き放ちました。
現在の生活で喪失を体験したとき、私たちは特に子ども時代の思い出を意識するわけではありませんが、実際にはそんなとき、過去からずっと積み重なった痛みを感じているのです。
アダルトチルドレンを抱えているトムは、子どもを厳しく批判する家庭で育ち、いつも親に拒絶されるという喪失を体験していましたが、高校を卒業するとすぐ家を出て、親や兄弟から離れました。
そして28歳のとき、婚約者が彼のもとから離れていったことで、際立って悲劇的なアダルトチルドレンの彼の考え方は、ひどい絶望へと進んだのです。
アダルトチルドレンの彼は自分を全く価値のない人間と見なしました。
かつての婚約者が自分よりずっと経済的に安定していて、はるかにおもしろくて気の利いた相手と結婚することを想像しました。
きっと子どももできるだろう、そして自分は一生孤独に過ごすのだと考えました。
自分は二度と幸せを味わうことはないだろうし、他の誰にも心許すことはないだろうと思ったのです。
やがて、アダルトチルドレンの彼は一日に十二時間から十四時間も床に就いているようになり、昼間の仕事に出られなくなり、運動することもなければろくな食事もとらなくなったのです。
人間関係が壊れることは、特に若い時代にはよくあります。
それでも、アダルトチルドレンを抱えていたトムは子ども時代の慢性的な喪失体験のために、婚約者を失った悲しみにきちんと向き合って乗り越える方法を身につけていなかったのです。
アダルトチルドレンの彼はその体験を、自分が能無しで無価値である証拠としてしかとらえることができませんでした。
この喪失は、すでに存在していた自己否定感を大きく燃え上がらせる最後のたきぎとなったのです。
犠牲者役割をとることと同じように、うつも、喪失の痛みを癒やす方法をもたないために生じるのです。