過去の痛ましい真実を発見し認める作業は、「グリーフワーク」でもあります。
グリーフワークとは喪失の悲しみを表現して癒していく作業です。
私たちは今まで、自分の人生に起こった喪失に気付かないままでいたり、事実だという確認を得られずにいました。
そのため喪失にともなう感情は、あなたをひどく傷つけかねない時限爆弾となっています。
それはうつ、さまざまな物や行動への依存、自分を傷つける関係にはまること、子育ての難しさといった形をとって現われているかもしれません。
ですからここできちんと時間をとって、悲しみを表現することが大切なのです。
グリーフワークには次のような意味があります。
・子ども時代の喪失を確認する。
・喪失感を感じることを自分に許す。
何が起こったかに気付いて認めるだけでなく、怒りや悲しみなど喪失にともなうあらゆる感情を、当時と同じ深さで感じることが大切。
・こうした感情を尊重し、しっかり受け止める。
悲しみが置き去りにされて残らないように、もっとも深いレベルの感情を通り抜けなければならない。
・感情を他の人と分かち合う。
これは、傷を光と空気のもとにさらして治療を可能にする方法。
傷がもはや秘密ではなくなったとき、恥に満ちた自己否定感は消えていく。
他の人に受け止めてもらうことで、日の光によって氷が溶けるようになくなっていく。
人は大切なものを失ったとき、否認、怒り、取り引き、抑うつという段階を通って最後に受容へと至ります。
最初は否認によって自分を守り、やがて理不尽な事態に怒りを感じ、次には失ったものを取り戻す手段を探し求め、それがうまくいかずに深い悲しみに沈み、時間をかけて喪失を受け入れていくのです。
その受容の末に、希望や笑いが少しずつ戻ってきます。
けれど何かの原因でグリーフの段階が途中で止まってしまうと、悲しみは癒されずに残ります。
私たちにとってグリーフワークが難しい理由の一つは、喪失が慢性的なものであり、それにすっかり慣れてしまっているため、喪失があったことにさえ気づくのが難しいこと。
もう一つは、怒りや悲しみなどの感情に対する怖れです。
安全な形で過去にまつわる感情を感じ、語るためには、準備がいります。
その一つは、何が「ふつう」かを知っておくこと。
問題を抱えて育った私たちは、それがわからないことが多いからです。
たとえば、悲しいときに涙が出るのは変なことではなく、「ふつう」なのだと理解しておいてください。
あなたの感情は、どれも間違っていないし、ちゃんと理由があります。
他の人が自分と似た体験を語るのを聞くことも必要です。
こうした体験が綴られた本を読むことも、自分自身の体験を理解し語るための言葉を与えてくれます。
信頼することも必要です。
過去の痛みを通り直すためには、自分への信頼がなければいけないし、あなたと一緒に歩いてくれる相手を少なくとも一人は信頼できないといけません。
たとえばカウンセラーや、仲間や、気持ちを分かち合える友人です。
子ども時代、私たちは自分を守ってくれるはずの相手を信頼しては、しばしば裏切られてきました。
そのため信じることを怖れるようになり、自分にとって大切な相手を信頼しようとしたときに起こる感情と格闘するのに時間がかかります。
けれどこのプロセスを通ってこそ、やがては、小さかった頃の自分を受け入れ、確認することができるのです。
アダルトチルドレンの回復途上にある人が「解決法を探そうとせずに過去にばかり目を向けている」と批判されることがあります。
けれども、私たちはこのプロセスで子ども時代の体験を自分のものとして受け止めているのであり、必要なだけの時間をとらなければならないのです。
すべてのことを一度に思い出すことはできないし、感情も一度に表面に出てくるわけではないのですから。