主張訓練法とは
人付き合いの苦手意識の強い人の多くは、自分の考えや感情、要求などをうまく主張できません。
そのために、人と接することが重荷になっています。
ですから、自分を適切に主張する力をつけると、ストレスが少なくなります。
適切な自己主張能力をつけることで、人間関係の改善を図り、よりよい精神生活をもたらそうとするのが主張訓練法です。
他者に対する私たちの行動は、受け身的行動、攻撃的行動、主張行動とに分けることができます。
受身的行動とは、もっぱら自分を抑えて、相手に従う行動です。
これでは、ストレスがたまっていくばかりです。
攻撃的行動とは、相手をやっつけたり、屈服させたりしようとする行動です。
そのときには気分がすっきりするかもしれませんが、人間関係の悪化をもたらし、かえってストレスを大きくしてしまいます。
主張行動とは、自分の内面を伝え、ストレスフルな事態の解決をもたらそうとする行動です。
単に相手に対して「ノー」と言うのではなく、自分の気持ちや意思をきちんと表現して伝えることです。
他の人の権利を侵害したり、感情を傷つけたりすることなく、自分の権利を行使することです。
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主張訓練法の実際
主張訓練は実際にはどのように行えばよいのでしょうか。
残念ながら、その魅力的なネーミングとは裏腹に、この心理療法が自己主張能力をつける特効薬を提出しているわけではありません。
私たちの行動様式は生後長い間行ってきたものですから、段階を追って少しずつ修正していくしかありません。
ともかく自分なりに、可能な場面で、自分にできる形で、少しずつ自分を出してみることです。
最初は、ほんのささやかな主張行動しかできないでしょう。
場合によっては、主張行動がかえって、ストレスをもたらすこともあるでしょう。
それでも、少しずつ、チャレンジしてみることです。
チャレンジの場を広げてみることです。
自己主張訓練は、一般に以下のような手順で行われます。
1.自己主張したい場面をあげる
たとえば、次のような場面です。
- Aさんがいつも一方的に仕事を押しつける。
- 参加したくないのに、誘われると断れない。
2.自己主張したい場面を選択する
最初は一つか、せいぜい二つに絞ったほうが焦点を定められるので有効です。
次のような基準で選択するとよいでしょう。
- その場面での自己主張が正当であること。
- 自己主張できたらストレスが減る場面であること。
- 少し勇気を出せば自己主張できる場面であること。
3.獲得目標を明確にする
最終的な獲得目標は、自己主張によりストレスがかかる事態を変えることですが、最初から結果を期待できない場合があります。
こうした場合、「ともかく自己主張行動ができること」を目標にします。
4.行動の選択肢をあげ、一番よいと思う方法を選択する
自分の意思を伝える方法は、直接会って言う、電話かメールで伝える、メモを置いておく、人を介して伝えるなど、多様な方法があります。
その中からもっとも適切と思われる方法を選択します。
5.メンタル・リハーサルを行う
場面と行動を具体的に思い描いて、頭の中で練習してみます。
主張するタイミング、内容、言い方。
これらをできる限り具体的に思い描いて練習することが大切です。
実りあるコミュニケーションになるか否かは、何を話すかではなく、どのように話すかによることが少なくないからです。
6.実行し、自己強化する
「Aさんがいつも一方的に仕事を押しつける」という例でいえば、「私は〇〇の仕事がありますので、今は引き受けられません。
二日ほどで終わりますので、その後でよければ引き受けられます」と言うなどです。
攻撃的にならず、しかし、きっぱりと言います。
後味が悪いなどと、自己主張したことをいつまでもウジウジと考えていることは無駄です。
むしろ、「イエス」「ノー」がはっきりしているほうが、相手の人は対処しやすいのです。
実行できたら、できた自分にご褒美をあげます。
すなわち、自己強化を与えることです。
繰り返し同じような場面できちんと自己主張を行っていくと、周囲の人もそのように受け入れてくれるようになります。
そのために、次第に自己主張が楽にできるようになります。