たとえば、大学に進みたいと思いながら、勉強しようとしない。
これは「いま、ここ」を真剣に生きていない態度でしょう。
もちろん、受験はずっと先のことかもしれません。
何をどの程度勉強すればいいのかわからないし、面倒に感じるかもしれません。
しかし、毎日少しでもいいから、数式を解く。
単語を覚える。
つまりはダンスを踊る。
そうすると、そこには必ず「今日できたこと」があるはずです。
今日という一日は、そのためにあったのです。
決して遠い将来の受験のために今日があるのではありません。
あるいはお父様の場合も、毎日仕事を真剣に踊ってこられたのでしょう。
大きな目標があったとか、その目標を達成できたとか、そんなこととは関係なく「いま、ここ」を真剣に生きてこられた。
だとすれば、お父様の生は幸福だったはずです。
ただどこに達したのかを線で見るのではなく、どう生きたのか、その刹那を見ていくのです。
これはあなた自身の人生についても、同じことが言えます。
遠い将来に目標を設定して、今はその準備期間だと考える。
「本当はこれがしたいけど、やるべき時が来たらやろう」と考える。
これは人生を先延ばしにする生き方です。
人生を先延ばしにしている限り、われわれはどこにもいけませんし、味気ないモノクロームの日々が続くだけでしょう。
「いま、ここ」は準備期間でしかない、我慢の時期だと思っているわけですから。
しかし、たとえば遠い将来の受験に向けて勉強している「いま、ここ」も、すでに本番なのです。
目標など、なくてもいいのです。「いま、ここ」を真剣に生きること、それ自体がダンスなのです。
深刻になってはいけません。真剣であることと、深刻であることを取り違えないでください。
人生はいつもシンプルであり、深刻になるようなものではない。それぞれの刹那を真剣に生きていれば、深刻になる必要などない。
そしてもうひとつ覚えておいてください。エネルゲイア的な視点に立ったとき、人生は常に完結しているのです。
あなたも、そしてわたしも、たとえ「いま、ここ」で生を終えたとしても、それは不幸と呼ぶべきものではありません。
20歳で終わった生も、90歳で終えた生も、いずれも完結した生であり、幸福なる生なのです。
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ここまで何度となく人生の嘘という言葉を使ってきました。
そして最後に、人生における最大の嘘は何かをお話ししましょう。
人生における最大の嘘、それは「いま、ここ」を生きないことです。
過去を見て、未来を見て、人生全体にうすらぼんやりとした光を当てて、何か見えたつもりになることです。
あなたはこれまで、「いま、ここ」から眼を背け、ありもしない過去と未来ばかりに光を当ててこられた。
自分の人生に、かけがえのない刹那に、大いなる嘘をついてこられた。
さあ、人生の嘘を振り払って、怖れることなく「いま、ここ」に強烈なスポットライトをあてましょう。
あなたには、それができます。
過去も未来も存在しないのですから、今の話をしましょう。決めるのは、昨日でも明日でもありません。「いま、ここ」です。
対人恐怖症、社交不安障害を克服するには、「いま、ここ」を意識することです。