怖さへの対処法
以上のツールは、どの感情にも使える。
基本的には人間関係に限らずどんなトラブルでも「下げる」「触れる」「考える」のスキルを順番に使っていけばいい。
ただ、それぞれの感情ごとに、ちょっとしたコツがある。
そこで感情のケアでは、感情ごとの対処法も練習する。
そのポイントを紹介しよう。
例えば、怖さ。
怖さは「将来の危険を予測する」感情だ。
絶え間ないシミュレーションをしてしまうので、疲れるし、振り回される。
嫌われる感情の筆頭だろう。
怖さ対処のコツは、「怖さはゼロにする必要はない」と認識すること。
つらい感情なので、どうしてもゼロにしたい。
また、他の人を見ると、同じことでも怖く感じていない人もいる。
すると「期待と比較」のプログラムが働き、「自分も〇〇さんのようにポジティブであるべき」と考えてしまう。
また、現代は、暗く悩むより、明るいほうが良い、小さいことを気にかけるより、豪快なほうが良いという風潮があるようだ。
これは西洋からの文化の影響と、文明の発達により、現代人が過剰な万能感を持ち始めているからだと思う。
しかし、現実の私たち日本人は、そのような雰囲気に少し無理を感じている人が多いのではないだろうか。
四季があり、稲作を営んできた日本人は、「予測力」こそが身を守り、パワーになってきた民族といえる。
怖さは、勤勉で、改善好きな私たち日本人の本質であり、あなたを支える力である。
だから苦しいからといって、ゼロにする必要はない。
また、ゼロにはならない。
必要な怖さもあるのだ。
できないことをやろうとしていると、自信を失い、それでまた不安になってしまうという悪いサイクルが始まる。
また、他人と比較してもいけない。
何をどう怖く思うかは、その人の経験や性格によって、かなり変わってくるからだ。
では、どうすればいいのか。
怖さはどうしても過剰になりがちなので、過剰な部分の怖さを少なくすればいいのだ。
過剰には、「シミュレーションの過剰」と「考えている時間の過剰」がある。
考えている時間のほうがコントロールしやすい。
考えている時間が短くなると、怖さによるエネルギー消耗を少なくすることができる。
そのためには、集中して悩む時間を作るといい。
具体的には、感情ケアを「意識的に行う」のだ。
時間を決めて、集中的に「下げる」「触れる」、そして「考えて」みる。
怖さは、いつも考えさせているが、結局浅く、狭くしか考えていない。
それではただ不安のトラックをなぞり、苦しい思考を深めていくだけになる。
本当は、他人と相談しながらその気持ちについて考察するのが最も効果的だ。
ただ、そんな相手がいないなら、自分で感情ケアのプロセスを、意識的に進めてみよう。
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怖さパワーで集中して考え、行動に移す
その時のコツがいくつかある、一つは、書きながら進めること。
怖さは、そのシミュレーション力が「最悪の事態のイメージに集中しがち」であることも特性の一つだ。
原始時代には必要なことだったが、現代人には必要以上に行き過ぎになる。
恋愛関係に怖さがある時、なぜか別れ話の場面ばかり考えたりすることに、思い当たる人も多いはずだ。
本当は恋人との関係で今できること、改めることがあるはずなのに、「別れ話を言われたらこう切り返そう」などとキリキリしてしまう。
これは怖さの予測力が、最悪の場面にフォーカスしてしまう影響だ。
そこで不安を感じたら、集中して考える時間を持ち、何が怖くて、その大きさはどのくらいかなど、図に書くなどして、とことん考えてみることも有効だ。
また、怖さは行動の予定が立つと落ち着くという側面がある。
そこで、いつ、何を決めればよいか。
できること、できないことなどを分析し、とりあえずやれることを具体的に挙げてみる。
そして、それを、行動に移してみる。
怖さは、情報によって発動し、次の情報によって変化する。
一方で、これまで使いがちだった「忘れてしまう対処」だと、行動しないことになる。
行動しないと何の情報も入ってこず、これまでの情報を何度もこねくり回して、一人で怖さを深めてしまいがちだ。
そこで、先に分析した具体的行動を、勇気を出して実行してみる。
すると新しい情報が入る。
新しい情報が入れば、それをまた分析し、行動に移す。
これが怖さパワーの正しい使い方だ。
このとき、先の分析の段階で、大きな不安に最初から取りかかるのではなく、中くらい、小さな不安からこまめに対応していくのも重要なポイントだ。
例えば、受験生も、ただ受験を怖がるだけでは何も進まない。
受験を忘れるため、漫画を読んだり、スマホをいじったりしてしまう。
当然、学力は伸びない。
不安を整理し、さしあたってできることを分析する。
まずは模試などに集中することで、自分の課題が具体的に見えてくる。
情報をアップデートすることで、対策も打ちやすくなる。
その結果、ムダな不安の拡大を防げ、実際に実力を向上させる行動をとることができるのだ。