ひきこもりの一番多い精神症状は対人恐怖症
ひきこもり状態にもっとも多くみられる精神症状の一つが、この「対人恐怖症状」です。
ただし一部で誤解されているように、「ひきこもり=対人困難」ではありません。
限られた相手や状況下では、ほとんど困難を感じずに振る舞うことができる人も少なくありません。
逆にいえば健常であっても、あらゆる場面で対人困難を感じないという人は少ないでしょう。
ともかく、きっかけはどうであれ、ひきこもり状況が長期化してくると対人関係は困難なものとなってきます。
調査の時点で交際している友人の数が一人、もしくはまったくいないものは41%でした。
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また、友人関係があるとされるもののなかでも、頻繁に連絡をとりあったり、行動をともにするような親密な関係のものは23%にすぎません。
本来なら健常者の統計調査と比較すべきなのですが、この数字だけをみても、いかに彼らが乏しい人間関係の中で生活しているかが判ります。
また調査時点までに異性との交際経験がまったくないものが78%を占めており、平均年齢が22歳であることを考えると、これもまた対人関係の貧しさを示す結果と考えてよいでしょう。
さて、実際の症状の有無についてはどうでしょうか。
調査結果では自己臭、赤面恐怖を含む「対人恐怖症状」は67%にみられました。
しかし、ひとくちに対人恐怖症状といっても、その訴えはかなり多様なものです。
まだ比較的ひきこもり程度が軽く、外出などはそれほど抵抗がない場合でも、「近所の人目が気になる」という人は少なからずいます。
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ある特定の状況、例えば「制服の人をみると緊張してしまい、不安になる」「年長の人のそばに近寄ることができない」といったものもありますし、中学時代に激しいいじめを経験した二十代の青年は「学生服の集団が恐ろしい」と訴え続けていました。
こうした事例では、恐怖と攻撃性がしばしばないまぜになっていて、ちょっとしたきっかけで喧嘩沙汰に及ぶこともあります。
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そのほか、「他人の視線が気になるため、電車やバスに乗ることができない」といったものもあります。
また自分の家に他人が入ることを極端に嫌うことが多く、人が訪ねてくると隠れてしまったりすることもあります。
電話が鳴っても、まったく取ろうともしない人もいます。
また、ある程度社会参加が可能な人でも、その限られた集団の中でさえ、なかなかくつろぐことが難しい人たちがいます。
そうした人の話を聞いてみると、「他人の中に入っていっても、雰囲気を壊してしまう」「自分は話題が乏しいので、輪の中に入っても白けさせてしまう」といった、自分を一方的に責めるような訴えが、よくみられます。
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これが極端になってくると「自分の体からいやな臭いが出ているのではないかと気になる」といった自己臭妄想や、「自分の視線がきつすぎるため他人を傷つけてしまうのではないかと不安になる」といった自己視線恐怖と呼ばれる症状が出てくることがあります。
また、客観的にはそうでもないのに、自分の顔が醜いと信じ込んでしまう、醜形恐怖という症状もよくみられます。
「鼻がいびつ」「髪の毛が薄い」「にきびが多すぎる」「太り過ぎている」といった外見的特徴を気に病んで、他人と関われないような事例です。
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ちょっと前までは赤面恐怖という症状が対人恐怖症状の代表的なものだったのですが、こちらは減少傾向にあるといわれ始めました。
ちょうどこれに替わるようにして目立ってきたのが、この醜形恐怖症状です。
この症状を訴える人は、ほぼ決まって美容整形外科を頼りにします。
もちろん保険はききませんから、高額な手術費が壁になって、全部が手術までいたるわけではありません。
しかし中には、親に無理やり手術費を払わせて整形を決行してしまう場合もあります。
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手術を受ければ本人も満足し、すみやかにひきこもり状態から脱することができるかといえば、そうは運ばないところがこの症状の難しいところです。
たいていの場合、手術の結果が気に入らず、しかし整形医にクレームをつけても埒があかず、結局以前よりもひきこもってしまうということになります。