アルバイトをやってみたいと言うひきこもりの息子
ひきこもって四年になる息子が、毎月二回の通院ができるようになりました。
アルバイトをしてみようかと言っていますが、このような場合、どう接したらいいでしょうか?
このように活動が活発になるということは、家族との信頼関係が安定していることを意味しているでしょう。
それだけに、この時期に親御さんがいろいろと焦ってしまって、つい励ましたり叱ったりするということはさけねばなりません。
それをしてしまうと、もう一度一からやり直しになってしまうからです。
焦らずに変化が定着するのをじっと待ち受けることが、一番大切なことでしょう。
それから、ひきこもり状態の人が少し活動的になってくると、むしろ動けない状態への恐怖がいっそう高まります。
活動をはじめ、それが安定するまでにはさらに紆余曲折を経なければなりません。
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一時的に不安定になったり、また動けなくなったり、そういうことを繰り返しながら改善していくのです。
ですからご両親はそうした経過をあらかじめ予測して、ご本人の状態にあまり一喜一憂しないことが大切です。
ひょっとしてご本人は焦りとか周囲への気兼ねからアルバイトのことを口にしている可能性はないでしょうか。
もしそうであれば、実際に動くのはもう少し先になるでしょう。
いきなりアルバイトという目標は一般に考えてハードルが高すぎるように思います。
地味なようでも、やはりデイケア活動への参加などから段階的にならしていくほうがより確実でしょう。
いまは「がんばれ」というよりは「無理しないで」と言ってあげるか、口に出さぬまでもそうした態度で見守るべき時期ではないかと思います。
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ひきこもり青年がアルバイトの他に外の社会とかかわる手段
アルバイト以外に、外の世界とかかわる手段としてはどのようなものがあるでしょうか?
どのようなアルバイトから始めたらよいか
何かアルバイトをしたいと言っていますが、職種としてはどのようなことから始めるのがいいでしょうか?
まずは生身の人間に出会い、ふれあう経験を重ねていくことが目的ですので、探そうと思えばそうしたルートはいくらでもあるでしょう。
もちろんご本人の希望を尊重するべきですが、カルチャーセンターやパソコン教室、英会話学校、料理教室、ボランティア活動、自動車教習所のように、実用的で、心理的な負担があまり大きくないところがお勧めです。
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ひきこもり克服の試みの関連ではデイケアや自助グループなどがあります。
アルバイトの職種もいろいろありますが、私が担当している人たちで比較的成功率が高いと思えたのは「宅配便の仕分け」「スーパーの品出し」「ポスティング」「家庭教師」「登録制の引っ越し手伝い」「役所・郵便局の短期アルバイト」などでしょうか。
ただ、アルバイトに限ったことではありませんが、それが続くかどうかには「お仕着せではなく自分でみつけた」という感覚が大切なような気もします。
まずはアルバイト雑誌をじっくり眺めることからはじめてみるのもよいでしょう。
ついでながら、アルバイト雑誌と織り込みチラシだけが情報源ではなかなかみつかりにくいこともあるでしょう。
動ける人は町中を歩き回りながら募集広告をチェックしたり、気に入った店があったら飛び入りで就職活動をしてみるなど、工夫の余地はいくらでもあると思います。
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バイトを継続するコツについても、ちょっとだけふれておきましょう。
はじめてのアルバイトとなると、ついいきごんで週五日フルタイムなどという無茶なスケジュールを組んでしまいがちなものです。
しかし、これではすぐにくたびれて中断してしまうことになりかねない。
どうせやるなら、できるだけ長期間継続して自信につなげたいものです。
最初は実力の80%くらいでこなせるような勤務態勢を組み、慣れてきたら時間あるいは日数を少しずつ増やす、というやり方のほうが現実的でしょう。
また、二つ以上のバイトの「掛け持ち」もお勧めです。
疲労がたまってきつくなってきたとき、掛け持ちであれば優先順位の低いほうの仕事を切り捨てれば済む。
あるいは「きつければ一つやめればいい」と思えるだけでも、気持ちが軽くなるという効用もあります。
いずれにしても、できる限り気持ちのゆとりがなくならないような工夫を自分なりにしてみることです。
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ひきこもり青年はアルバイトをしたほうがよいのか
・四ヵ月ほどアルバイトをやり、やめて二ヵ月ひきこもっています。
ほとんど話しませんが、ひきこもりが長期化しないような対策はないものでしょうか?
・月二回通院しています。アルバイトをすると言いつつできないでいます。
温かく包むような接し方がいいのでしょうか?厳しくしないといけないのでしょうか?
・アルバイトの面接に行きますが、本当に採用になったら働いていけるか不安だと言います。
友人とは毎日会ったりしていますが、まだアルバイトは早いでしょうか?
まず、社会参加のきっかけとして、アルバイトが最上のものとは限らないという点はご理解ください。
ご本人の状態にもよりますが、私は治療の中では、アルバイトよりはデイケアやたまり場のような場所への参加のほうが有意義であると考えています。
世間体や経済的側面のみから社会参加を考えると、発想としてアルバイトが第一という発想をまずご家族が捨てることです。
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その都度ご本人にとって可能な社会参加の手段があるはずですから、それについてご本人と話し合いながら進めていくことが最も望ましいのです。
日常的には二番目のご質問にあるように、温かく包むという姿勢で問題ないと思います。
アルバイトができないことについて厳しく接しても、まったく逆効果にしかならないでしょう。
三番目の質問ですが、「アルバイトは早い」という断定的な表現は好ましくありません。
いずれにしても親が場の主導権を握っているという意識は捨てるべきでしょう。
親御さんがよかれと思ってご自分のイメージをご本人に押し付け、言うことを聞かないと言っては腹を立てるというパターンに陥らぬようご注意ください。
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社会参加に際しては、あくまでもご本人のイメージ、ご本人の意志を主体に考えて、親御さんの意向としては「あなたの気持ちを尊重する、ただ無理だけはしないでほしい」ということが伝わっていれば十分です。