相手の立場から自分を見てみる
「相手の感情」を変えようとしない、「自分の行動」から変えようとする
人間関係でうまくいく人には、二つの共通した特徴があります。
まず一つは、「相手の感情」を変えようとしないこと。
そしてもう一つは、「自分の行動」から変えようとすること。
「感情」は複雑なものですが、「行動」は単純なものだからです。
たとえば苦手な相手に対しても、「感情」をすぐに変えることはできませんが、「自分の行動」を変えることは、今すぐにできます。
そして、「自分の行動」を変えれば人間関係は90%うまくいく。
こう言っても過言ではありません。
だから、まずは「自分の行動」を変えること。
「自分の行動」を変えると、「相手の行動」、さらにはお互いの「感情」も自然と変わってきます。
たとえば、これまで挨拶もしなかった相手に、毎日挨拶をする。
「なんだ、それだけのことなのか!」と思った人もいるかもしれません。
そうです。たったこれだけのことで、現在の人間関係が劇的に変わっていくのです。
まず、相手が応えてくれるようになります。
つまり「相手の行動」が変わる。
さらに、毎日挨拶をしていると、その相手に親近感を持つようになります。
いつの間にか「自分の感情」も変わるのです。
そして「自分の感情」が変わるように、「相手の行動」が変わると「相手の感情」も変わってくるのです。
いきなり「相手の感情」を変えようとはせず、今すぐ「自分の行動」を変えることに集中する。
これが、「頭のいい人間関係」の基本です。
「円滑にする→強化する→拡大する」で、誰とでもうまくいく!
楽な人間関係を構築するにあたり考えてほしいことがあります。
それは、頭のいい人間関係の目的―何のために人間関係を良くしたいのか?ということです。
これがハッキリしていないと、効果がなかなか出ません。
あなたにとって、仕事上での「人間関係の目的」は何ですか?
この質問は、非常に重要です。
何のためにあなたは人間関係を有効に活用したいのかを真剣に考えてください。
頭のいい人間関係の目的として、次の9つを挙げます。
- ストレスなく仕事ができること
- 苦手な人とでも、一緒に仕事ができること
- 人から信頼されること
- 大事な仕事を任せてもらうこと
- 仕事で成果を出すこと(出世すること)
- 部署や会社のチーム力を発揮すること
- 社外の人脈を構築すること
- 自分に協力してくれる優秀な人材を確保すること
- 自分がやりたい仕事を実現すること
どれも大事なことです。
現在、自分が直面している人間関係の悩みに応じて、その目的は異なってきます。
わかりやすいように、1~9を四つに分けてみましょう。
A.人間関係を「円滑にする」(1と2)
B.人間関係を「強化する」(3と4と8)
C.人間関係を「拡大する」(7)
D.人間関係を「活用する」(5と6と9)
ここでは、この四つを頭のいい人間関係の目的と定義します。
上司とうまくいっていなくて、悩んでいる人もいるでしょう。
「なぜ自分だけ責められるのか?」と悩んでいる人もいます。
そういう人にとっては、Aの「円滑にする」が頭のいい人間関係の目的になります。
人間関係でうまくいっていない場合は、マイナスからのスタートです。
まずは、マイナスからニュートラルな関係に戻すことが大切です。
そのためのコツは、自分の感情を交えず、人間関係を良くするために「やるべきことをやる」と、まず割り切ることです。
ただ、「頭のいい人間関係」というからには、人間関係を円滑にするだけでは、物足りないですよね。
Bの「強化する」では、相手から「信頼」されることを目指します。
成果を出すうえで、自分一人の力では限界があります。
だから、社内であれ社外であれ、相手の信頼を勝ち取る―相手を自分の「味方」にする―ことは、仕事を成功させる絶対条件と言ってもいいでしょう。
そのためのコツは、「自分の得意分野」と「相手の得意分野」で付き合うことです。
さらに、Cの人間関係を「拡大する」になると、もっと仕事がうまくいくようになります。
積極的に出会いの機会を持って、自分の世界を広げてほしい。
外の世界には、自分にない能力を持った人や魅力的な人がたくさんいます。
そういう人たちと一緒に仕事をするためにも人間関係を広げることは欠かせません。
社内、社外を問わず、人間関係を広げておけば、後から得られる「成果の大きさ」もグンと変わってきます。
そのためのコツは、つねに情報を発信することです。
最後が、Dの「活用する」という目的です。
言葉はちょっと悪いですが、人間関係を武器にして、さらに大きな成果を出すことを目指します。
あなたが「この仕事をやりたい!」と思ったとき、それを実現するためにもっともいいチームを組む。
それが、「人間関係を活用する」ということです。
つまり、あなただけの最強チームを作って、協力しながら「大きな成果」を生み出せるような人間関係を作るということです。
そのためのコツは、人間関係を絞り込むことです。
このように、少し自分の行動を変える。
それだけで「うまくいっていない人間関係を修復する」といったマイナスのスタートから、「人間関係を仕事の武器にする」といったポジティブなゴールまで、人間関係の質を変えてしまうことができるようになるのです。
信頼される人ほど逆説語を使わない
相手を怒らせるかどうかは、ちょっとした言葉遣いの差で変わります。
たとえば、「逆説語」を使わない。
「逆説語」とは、「でも」「ところが」「しかし」「だけど」「けれど」といったネガティブな言葉です。
それもそのはずで、「逆説語」とは否定的な表現ですから、相手にネガティブな印象を与えてしまうのです。
本人に悪気はなくても、つい「でも・・・」という「逆説語」を使ってしまう人がいます。
若い人に多いのですが、口癖になっているので使っている本人が気づいていないことが多いようです。
実際に、セミナーで若い受講者を教えているときに強く感じています。
たとえば、返事をするとき、「でも、スケジュール的には可能じゃないですか」「でも、コスト面ではボーダーラインかもしれません」といったように、冒頭の「でも」が口癖になっている人は要注意。
知らないうちに、相手から信用されるチャンスを逃している危険があります。
もう、おわかりでしょう。
これらの「接続語」は口にしなくても十分意味が通じるのです。
むしろ、「逆説語」を使わないほうが、相手に与える印象が良くなるのです。
たとえば、上司や取引先から仕事を頼まれたけれど、スケジュールが厳しかったとしましょう。
上司「A社への提案書、今週中に仕上げてくれる?」
自分「でも、スケジュールだけ、相談させてもらってもいいですか?」
上司「A社への提案書、今週中に仕上げてくれる?」
自分「スケジュールだけ、相談させてもらってもいいですか?」
どうでしょうか?
「でも」以外は、どちらも同じです。
にもかかわらず、「でも」があるかないかで、印象は大きく違います。
スケジュールだけが問題なのに、前者は全体的に後ろ向きな感じがします。
それもこれも、その前にあった相手の言葉を、「でも」で全否定しているように聞こえるからです。
つまり、否定的な言葉があると、それだけで全体を否定していると思われる可能性があるということです。
仕事自体を否定しているわけではない。
しかし、相手にそう思われてしまったら大変です。
「いっしょに仕事をしたくない」と思われてしまいます。
スケジュールだけが問題なのですから、前向きに聞こえる提案をすればいい。
わざわざ否定的な言葉を入れる必要などないのです。
相手の立場から自分を見る技術
怒っている相手との人間関係を元に戻す方法
怒っている相手でも、ちょっとしたことで関係がうまくいくコツがあります。
ビジネスでは、こちらに落ち度がなくても、相手を怒らせてしまう場合があります。
そのようなとき、その怒っている相手を安心させられる人と、その相手をますます怒らせてしまう人がいます。
この違いは、いったいどこで生まれるのでしょうか?
じつは、とてもささいなことなのです。
そのささいなこととは、相手が怒っているときに「すみません」という言葉をなるべく言わないこと。
そして、自分の行動を今後どう変えるかを伝えることです。
なぜなら、相手は、あなたから反省の言葉を聞きたくて怒っているのではなく、同じことを繰り返してほしくなくて怒っているからです。
「いい忠告だな」「勉強になったな」と思ったのなら、その後自分がどうするかを伝えるべきなのです。
たとえば、上司から怒られた場合、多くの人はまず「すみません」と謝ります。
ところが、この「すみません」が要注意なのです。
「すみません」という言葉は、単なる”その場しのぎ”の言葉です。
これだけでは、「相手に申し訳ない」という気持ちは伝わりますが、事態が改善するかどうかは伝わりません。
ですから、「すみません」ばかりでは、「謝っておけばいいか」というふうに勘違いされてしまう可能性があるのです。
すると、上司をますます怒らせることになってしまうのです。
上司は、あなたに「謝ってほしい」わけでなく、あなたに「同じミスを繰り返さないようにしてほしい」のです。
ですから、上司に怒られたら、「すみません」という謝罪の言葉は最後に言う。
その前に、上司が言っていることをきちんと理解していることを伝え、今後どのように行動を変えるかを約束することです。
たとえば、次の二つの会話を比べてみてください。
【上司を「より怒らせる」言い方】
上司「A社に出す見積書、計算が間違っているじゃないか!一度出した見積書は取り下げられないのだから、くれぐれも慎重にしてくれ」
自分「すみません」
上司「計算は最低でも二回は確認しなくちゃダメだよ」
自分「はい、すみませんでした」
上司「・・・(本当にわかっているのかな?)」
【上司を「安心させる」言い方】
上司「A社に出す見積書、計算が間違っているじゃないか!一度出した見積書は取り下げられないのだから、くれぐれも慎重にしてくれ」
自分「はい、気を付けます」
上司「計算は最低でも二回は確認しなくちゃダメだよ」
自分「はい、次からは必ずダブルチェックするようにします。ご迷惑をかけてしまい、すみませんでした」
上司「うん。次からはしっかりね(これで同じミスはなくなるな)」
上司にとって、注意したり怒ったりすることは、大変な労力を伴ないます。
できれば注意もしたくないし、怒りたくもない。
でも、部下のこと、仕事のこと、会社全体のことを思って、その労力を払うのです。
それを「すみません」だけで片づけられたら、どう思うでしょうか?
最悪の場合、「何度教えても理解できない部下」「期待できない部下」の烙印を押されかねません。
さらに言えば、「注意される」「怒られる」ということは「期待されている」ことの裏返しでもあります。
だからこそ、「すみません」と謝るよりも、指摘されたことを契機にして、何をどう変えていくのかを約束・宣言することを忘れてはならないのです。
この一言で、上司は目的が達せられたと実感するでしょう。
あなたにしても、「怒られたけど、同時に次からは同じことを繰り返さないためのアドバイスをもらったのだ」と思えば、怒られた事実をポジティブに受け止められます。
これで、上司との関係は元通りです。
怒られても、関係を悪化させることはありません。
怒られたら、どう行動を変えるのかを約束する。
この「自分の行動」一つで、「自分の感情」も「相手の感情」も、より良い人間関係に向かって改善されるのです。
自分が見た事実と自分が考える意見が報告の基本形
上司と話すときの、ちょっとした話し方のコツがあります。
これは、上司からの信用に大きく関わることです。
つまり、それができるかどうかで、上司との関係に大きな差が出てしまうのです。
このコツとは「事実」と「意見」を分けて話すこと。
ポイントは二つあります。
1.まず、「誰が」「何を」「いつ」「どこで」「どのように」という「事実」を言う。
2.次に、その「事実」に基づいて、あなたの「意見」を言う。
この「順番」が大切です。
たとえばこんな具合です。
【「意見」を先に言ってしまった場合】
上司「A社の取引はうまくいきそうか?」
自分「ちょっと厳しそうですね」(意見)
上司「・・・(何が厳しいのだろうか?)」
【「事実」を先に言った場合】
上司「A社の取引はうまくいきそうか?」
自分「A社の担当者は、今期は難しいと言っています」(事実)
上司「ということは、来期なら大丈夫?」
自分「来期の予算を決めるときに提案するということです」(事実)
上司「それを聞いて、君はどう思った?」
自分「うちのサービスに興味はありますが、導入するメリットがうまく伝わっていないように思います。このままでは厳しいのではないでしょうか。ただ、今後も積極的に、アプローチをかけていくつもりです」
上司「わかった。引き続きよろしく頼むよ」
最初から自分の意見を言うのは、仕事上は得策ではありません。
自分の意見には、どうしても「自分の感情」が入ってしまうからです。
なるべく「感情」を入れないことは、「頭のいい人間関係」の一番のコツでしたね。
ですから、仕事の報告をするときは、まず「事実」を先に言う。そして、もし上司から意見を求められたら、「事実」に沿って意見を言うようにする。
反対に、上司から信用を得られない人は、報告をするときに「感情」が先になっている人です。
それが、次のような「言い訳」の形になることも、しばしばでしょう。
「何度も催促しているんですが・・・」
「スケジュールが厳しくて・・・」
これは、自分の身を守るために、自然と出てしまう言葉です。
「自分は悪くない」「厳しい中でも一生懸命やっている」「それを認めてほしい」・・・こうした感情が先になってしまうため、自分の身を守ろうと無意識のうちに言い訳から入ってしまうのです。
しかし、これでは完全に逆効果。
上司は、「言い訳=感情」を聞きたいのではなく、まずは「事実」を知り、状況を理解したいのです。
現在どういう状況なのか―事実を知らないと、適切な指示もできません。
だから、「まず事実を言う」ことが、コミュニケーションを円滑にするのにもっとも効果的な話し方なのです。
「この場合、上司なら何を言うだろう?」できる部下の視点
上司に好かれる人には、意外な共通点があります。
それは、上司のモノマネがうまいという点です。
なぜ、モノマネが上手な人は上司に好かれるのでしょうか?
面白いからではありません。
その最大の理由は、上司のことをよく観察しているからです。
上手にモノマネをするためには、上司の話し方やちょっとした癖を、よく観察しなければいけません。
つまり、ポイントはモノマネができることそのものではなく、モノマネができるくらい上司のことをよく見ているということなのです。
そして、ここからが重要です。
モノマネができるようになると、なんと上司の思考回路がわかるようになるのです。
どういうことか、説明しましょう。
たとえば、話し方のクセ。
言葉の使い方から語気の強弱のつけ方、繰り返し言うことなど、いろいろな癖があります。
こうした癖は、単に「話し方の癖」にとどまらず、相手の「考え方の癖」を表しているのです。
したがって、話し方の癖をモノマネするということは、相手の考え方の癖までモノマネすることになるのです。
「この場面なら、こういうふうに言うだろうから気をつけよう」「きっとこう考えるだろうから、先回りして調べておこう」
など、上司の思考回路がわかれば、その対処法も自然と出てきます。
モノマネをしているうちに、上司の思考回路が何となくわかるようになれば、上司が求めている行動、情報なども、自ずと見えてくるでしょう。
上司にとって、自分の求めることがわかっている部下ほど、いっしょに仕事をするのが楽なものはありません。
上司のモノマネがうまい人は、上司に好かれる。
私がこう断言する理由は、そこにあります。
もちろん、この方法は、誰にでも使えます。
直属の上司のみならず、関係を深めたい相手がいるのなら、「その人の真似が上手になる」と決めて研究してみてください。
こうして相手をよくよく観察し、ものの見方、考え方、感じ方を知ることが、相手に好かれる意外な近道なのです。
上司のモノマネは、誰にでもすぐできるようになります。
そのためのポイントは次の5つ。
- 口癖(繰り返し言う言葉)を観察する
- 話しはじめる言葉(接続詞)を観察する
- 話し終わる言葉(語尾)を観察する
- 目の動き(興味・関心)を観察する
- 他の人と違うところを観察する
この五つに注目すれば、誰でもモノマネがうまくなります。
ここで大切なのは、モノマネをマスターするくらい、相手のことを観察するということ。
それだけ相手のことがわかるようになれば、人間関係は強化されるはずです。
相手の思考回路がわかるようになるまで、モノマネにチャレンジしてください。
相手の立場で自分をみると何をすればいいかわかる
「自分はどんな人と仕事をするのが一番か」をイメージする
いろいろな人と知り合う、いちばん手っ取り早い方法は何でしょうか。
多くの人は、自分と同様に「もっといろんな人と知り合いになりたい」と思っている人が集まる場所に行けばいいと思うでしょう。
もちろん、そのとおりなのですが、そのときに大事な考え方があります。
それは、明確な目的を持って人を探すこと。
異業種交流会や勉強会、懇親会つきのセミナー・・・など、最近はその気になればいくらでも「出会いの機会」が得られるようになりました。
有名な社長さんであっても、たいていはブログをしているので連絡することができます。
セミナーに参加すれば、あいさつ程度なら簡単にできます。
パーティーや交流会に行けば、いろいろな人と出会うことができます。
最近は、ツイッターもあるので、どのような人でも知り合いになれるようになりました。
あの人と会いたいと思ったら、いろいろな手段を使って会うことができます。
つまり、誰でも「はじめまして」が簡単になったのです。
「はじめまして」が簡単になった分、「二度目まして」が難しくなったとも言えます。
もう一度会うためには、なぜ「その人」に会うのか、明確な理由が必要だからです。
要するに、人間関係を広げるために共通するポイントは、
「二度目まして」「三度目まして」をいかに増やしていくかということです。
そのためにも、明確な目的を持って人を探すことが大切です。
明確な目的を持たずに、大勢の人が集まるところに行っても、無駄でしかありません。
「一緒に仕事をするための仲間を探す」
「通販業界にくわしい人を探す」
「国から補助金をもらっている企業の経営者を探す」
このように、明確な目的を決めておかないと、ずっと長く付き合える人とめぐり合うことはできません。
また、相手からも「この人と一緒に仕事がしたい!」と思ってもらうことはないでしょう。
自分が知りたいピンポイントな会話ができないので、ただの自己紹介で終わってしまうからです。
必ずどういう人を探すか、明確な目的を持つようにしてください。
「新しい人と出会う」というあいまいな目的では、うまくいかないのです。
もし目的がハッキリしていないのであれば、人の集まるところに行くのではなく、人を招く側のほうが、むしろ効率的です。
自分でパーティーを開催するなどして、まず知人を招待する。
そしてその知人に、「面白い人や知り合っておいた方がいい人がいたら、いっしょに来てほしい」と言って、自分の興味・関心に合った人を連れて来てもらう。
つまり、自分が会うべき人を知人に選んでもらう、ということです。
そうすれば、比較的容易に会いたい人に会うことが出来るのです。
相手の得意分野を探して聞く
仕事で成果を出している人は、周りの人を巻き込むのがうまい人です。
人が得意としていることを、自分の仕事に役立てることに長けているのです。
「そんなこと、とても自分にはできない!」「よほど周りの人に好かれているか、恐れられているか、そのどちらかなのでは?」と思った人も、いるかもしれません。
でも、これから紹介する「頭のいい人間関係のコツ」を使えば、周りの人の得意分野を、いとも簡単に自分の仕事に役立てることができるのです。
では、どうすれば、周りの人を巻き込むことができるのでしょうか?
その基本は、助けを求めて、自分で試して、感謝する―ということ。
1.わからないことは、得意な人に聞く
↓
2.聞いたことを自分で試してみる
↓
3.試した結果を報告して、相手の知識やノウハウをほめる
人には、それぞれ得意な点があります。
マーケティングが得意な人、企画が得意な人、営業が得意な人、制作が得意な人、PRが得意な人、会計が得意な人・・・。
パソコンに強い人、数字に強い人、エクセルに強い人、文章が上手な人、社内調整が上手な人・・・。
社外に目を向ければ、建設業界に精通している人もいれば、広告に精通している人、保険に精通している人、法人税対策に精通している人・・・。
何でも一人でやろうとしても無理な話。
そこで、それぞれの人の「得意な点」ばかりを組み合わせたら、どれほど仕事がやりやすくなることでしょう。
だからこそ、「自分の苦手分野を得意とする人がいるはず」という視点で周囲を見てみてください。
そして、得意な人が見つかったなら、わからないことはどんどん聞くのです。
「ちょっとマーケティングのことで聞いてもいいですか?」
「この数字が合っているか、見てくれませんか?」
「新店舗の立地条件のことで、相談に乗ってくれませんか?」
あくまでも、相手の得意分野で助けを求めるようにしてください。
そして、実際にアドバイスをもらったら、自分で試してみます。
自分でもう一度考えてみる、計算をしてみるというのでもいい。
とにかく言われっぱなしで終わるのではなく、自分で消化することが大切です。
実際に自分で試したら、その結果を必ず報告してください。
その際、相手の知識やノウハウを徹底的にほめること―。
これを絶対に忘れないでください。
「さすがですね。聞いて良かったです」
「すごいですね。自分では考えもしませんでした」
「相談して良かったです」
褒められてうれしくない人はいません。
「そんなに喜んでもらえるなら」「そんなに頼りにしてくれるなら」「自分が役に立つなら」と、今後も喜んで協力してくれるはずです。
相手の自尊心を刺激することで、周りの人を巻き込むのです。
さらに、相手を褒める効果は、これだけではありません。
ほめることには、相手に得意な点を気づかせるという効果もあるのです。
自分で自分の得意分野に気付いていない人は少なくありません。
自分の知識やノウハウが、誰かにとってそこまで「すごいこと」だとわかっていないケースが非常に多いのです。
だから、相手の知識やノウハウをほめる―。
「相手の得意な点をほめる」というより、「相手の得意な点を教育する」というイメージです。
何度も繰り返し言うことで、相手を教育していくのです。
これで「あなたはこんなすごいことができるのですよ」と相手に気付かせることができます。
また、教えてもらうようになると、逆に相手が自分の得意分野で困っていれば、スムーズに教えることができます。
つまり、話しかけるチャンスが増えるのと同時に、自分の得意な点を知ってもらうチャンスが生まれるということです。
自分だけが教えてもらう立場ではなく、教えてあげる立場にならないと、相手から認めてもらうことはできません。
関係は良好だったとしても、相手から認めてもらわなければ、いっしょに好きな仕事をして成果を上げることは夢のまた夢なのです。
得意な点をほめるポイントは、助けてもらったときだけでなく、普段の仕事の中にもたくさんあります。
たとえば、会議でするどい指摘をした人がいれば、「あのときの意見、良かったよ。さすが〇〇さんだよね」とほめます。
何もわざわざ言いに行く必要はありませんが、すれ違ったときなどの雑談にもってこいです。
そのためにも、普段から誰がどのような仕事をしているか把握しておきましょう。
その中で、「さすがだなぁ」と思うことがあれば、何気ないときに「この前の営業報告、良かったよ」とほめるようにすればいい。
これなら、今日からすぐに出来ますよね。
こういった普段の積み重ねが、自分だけの最強チームを作る下地になるのです。
相手の心をつかむうまい褒め方
もっとも簡単に人から好感を得られるコツがあります。
それは、本人がいないところで、その人のことを褒めること―。
文句や愚痴というのは、ついつい言ってしまうものです。
しかし、人間関係が上手な人は、例外なく文句や愚痴を口にしません。
なぜなら、文句や愚痴を言う人が、人から好かれることはないと知っているからです。
多くの人から好かれる人の特徴は、前向きな人です。
文句や愚痴を言う後ろ向きな人とは、なるべく付き合いたくないと思うのは、当然のことでしょう。
人の悪口を言う人は、心の底では信用できない―。
いくら調子のいいことを言われても、「ほかの場所で自分のことを悪く言っているのではないか」と思ってしまいます。
まずは、自分から文句や愚痴を言わないようにしてください。
そして相手から好感を得るコツが、相手がいないところでほめることなのです。
相手を直接ほめることも大切です。
しかし、当人がいないところでほめると、ボディーブローのように、後々効いてきます。
直接ほめられてもうれしいものですが、ほかの人から「〇〇さんが、あなたのことを褒めていたよ」と言われたら、「本当に、自分のことを買ってくれているんだな」と思います。
信憑性が増すので、よりうれしいのです。
だから、「この人と親しくしたい」「この人と一緒に仕事をしたい」と思ったならば、いろいろな場所でその人のことをほめることが大切なのです。
ほめるという行為は、本人に直接言うこと、そして間接的に伝えることの二刀流ですると、非常に効果的なのです。
人の悪口は、あっと言う間に相手に伝わります。
しかし、褒めたことが本人に、しかも効果的に伝わるまでには、少し時間がかかります。
そこで、もう少し戦略的に考えてみます。
どうすれば、早く本人に伝わるかを考えてみるということです。
その方法は、いたって簡単です。
コツは二つ。
まず、仮にAさんをほめたいとしたら、Aさんと近いBさんに「Aさんは、すごいですね」とほめること。
よく一緒にいる人、仲のいい人に伝えたほうが、より早く本人に伝わります。
話す回数が多いほど、「そういえば、ジョニーさんが褒めていたよ」と本人に伝わる機会が多いからです。
これが一点。
そして二点目は、他の人が言わないような褒め方をすること―。
これがとくに重要です。
「仕事ができる」「優秀だ」といった一般的な褒め言葉は、誰もが言うので印象に残りません。
だから、人が言わない褒め方をする。
もっと言えば、自分にはできないこと、自分が知っている人物の中で一番すぐれているところを見つけて、ほめるのです。
たとえば・・・
「相手を嫌な気分にさせずに、意見を変えてもらうように持っていく名人ですね」
「私が知る限り、一番、書類作成が速くて正確です」
といったことです。
なぜ、このコツが効果的かというと、具体的であることはもちろん、相手の頭の中で具体的なイメージが広がり、印象に残りやすいからです。
すると、ほめてくれた人(つまり自分)と会ったときに、思い出しやすいのです。
それに、こうした褒め言葉は、意識して考えないと出てきません。
つまり「その場しのぎのほめ言葉」ではないということが自然と伝わるので、あなたに対する信頼性も高まるのです。
本人がいないところでほめる効果は絶大です。
ほめることが苦手な人もいるかもしれませんが、積極的にほめるようにする―。
そうすれば、人間関係をより良くすることができるのです。