ひきこもり青年の社会復帰のポイント

ひきこもりと活動の繰り返し

元気、停止のパターンを繰り返す

二十歳の息子は、ひきこもって四年になります。

少し元気になって活動しはじめたかと思うと、突然行動を停止してしまうというパターンを繰り返しています。

どう理解すればいいでしょうか?

ひきこもりのケースは、日々不安定な気持ちで生活しているので、見かけ上元気になったり行動的になったりすることもありますが、そこで安心はできません。

ひきこもり治療の中では、改善はゆっくり確実に起こるものほど望ましいのです。

急激に元気に活発になったものは、些細なきっかけで再びひきこもってしまう可能性が高いとすら思います。

ご本人はひょっとしたら、なにか活動をすることだけを重視して、しっかりした人付き合いを持とうとはしていないのではありませんか。

親密な対人関係を背景にして行動するほうが、より安定し持続的な活動につながっていく確率が高いを思います。

もしご本人が「友達なんかよりも早くアルバイトを」という考え方に陥りがちなようでしたら、いったん立ち止まって、ちょっと回り道を提案してみるのも悪くない気がします。

ただし、いきなりそう説得しても聞いてはもらえないでしょう。

まずご本人の努力を評価したうえで、もしまたつまずくようであれば、そういう方向も考えてみてほしい、と提案するにとどめておくほうが効果的であろうと思います。

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ひきこもり再発にはどのように対応するか

二年間のひきこもりの後、治療の助けもあってトンネルから抜け出したように大学に通いはじめたのですが、半年後からまた行かなくなり、母親から出したメールへの返信もありません。

焦ってはいけないと思うのですが、この場合、親はどう対応するのがよいでしょうか?

ひきこもりから抜け出した後、ふたたびひきこもってしまうこと。

こういったケースが、最近は増えてきているように思います。

ひきこもり対策が進むにつれて、こうした戻ってきてしまったケースへの対処をどうするかは、これからの重要な課題といえるでしょう。

もちろん、基本的な対応方針は、そのひきこもりが一度目であれ二度目であれ、それほど大きな違いはありません。

ただ、二度目のほうが難しい点などもあり、それに対する配慮は必要です。

たとえば、治療によって立ち直り、もう大丈夫ということで治療を終えたケースが再度ひきこもった場合、ご本人の挫折感は非常に大きなものになりがちです。

また、きまりの悪さもあってなかなか治療が再開できないことがあります。

こういったことは、デイケアや自助グループを利用した方についても同様に当てはまります。

一度「卒業」した場所へは戻れない、戻りたくない、といった感覚が出てくるのです。

周囲の方は、ご本人のそうした気持ちを十分に汲んだうえで、慎重に対応していただく必要があります。

いずれにしても、焦りは禁物です。

もう一度、会話とコミュニケーションを復活することを目標として、働きかけを続けられることをお勧めします。

具体的には、もちろん治療も再開するのですが、前回とは異なった治療プランを、担当医とご本人とで話し合いながら決めていただくことが望ましいでしょう。

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ひきこもりに後戻りしない

通学を始めた息子の挫折を予防する知恵は

二十歳の次男が在籍三年目で都立定時制高校へ通学を始めました。

内向的なところがあり、また挫折するのではないかと心配です。

うまく挫折を予防する知恵はないものでしょうか?

社会参加まであと一歩。再発防止の方法は

家の中ではかなり活動的になり、社会復帰までもう一歩という感じがします。

再発を防止するにはどうすればいいでしょうか?

これも繰り返し述べてきたことですが、「ひきこもり」や「挫折」を100%予防する方法はありません。

むしろ予防を考えすぎることが、かえってご本人の状態に振り回されたり、いろいろな問題を呼び込んでしまう危険があります。

再発予防のためには、逆説的なようですが、「再発」を恐れすぎないことです。

ご本人が動き出したということは、すでにご両親に対する十分な信頼関係があり、対応もうまくいっていることの証拠でもあります。

ですからまず気をつけるべきは、現状維持でしょう。

ただ、油断は困ります。

よくありがちなこととして、ご本人の状態が安定して少し動けるようになると、親御さんとしては「この子はもともと普通の子だった」という思いが出てくるものです。

こうした親の欲目は無理もありませんが、やはり好ましいものではありません。

実は多くの場合、ご本人が一番おそれ、嫌うのはこうした親御さんの油断です。

親御さんから励ましの意味で「もう大丈夫」と言われても、嬉しいどころか腹が立つのがこの時期なのです。

くれぐれもこうした油断に陥らぬようご注意いただきたいと思います。

一定の緊張感を忘れないという意味からも「現状維持」をお勧めします。

ひきこもりを長期化させるのは、家族間のコミュニケーション不足です。

いま対策を講ずるとすれば、ご本人との会話をこれまで以上に充実したものにしておくこと、ご家族と一緒に旅行したり、外食したりする機会をたくさん設けること、それから、最後が一番肝心ですが、ご本人に注意が集中しすぎないように、ご家族それぞれがご自分の楽しみやつきあいを大切にすることです。

やりとりが活性化されれば、ご本人のわずかな変調にも気づきやすくなります。

早く気づくことができれば、いざというときにもうろたえずに対応することが可能になるでしょう。

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人間関係が築けない息子が心配

高一で中退し、現在二十四歳の長男です。

苦しい時期を経て不登校気味ながら大学に入って現在二年生です。

よく頑張っていると思うのですが、人間関係が広がらず、友人もいないので心配です。

デイケアやたまり場などを勧めるべきでしょうか?

親御さんのご心配はよくわかります。

しかし、今のご本人の状態は、病気どころか「社会的ひきこもり」ですらありません。

このような方に治療を勧めることは、著しくプライドを傷つける結果となり、親御さんへの不信感にもつながりかねないでしょう。

頑張っているご本人に対しては、その努力を認め、評価するだけで十分ではないかと思います。

さしあたりデイケアもクラブも必要ないでしょう。

少なくともお母さんは、そういうものが利用可能であるという情報は与えたわけですから、それ以上はご本人の判断に任せるべきでしょう。

いまから先取り的に心配しても、あまり予防の役には立ちません。

どんなに心配でも、ご本人が自分で何とかするだろう、という楽観主義で見守っていただきたいものです。

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社会復帰にあたって

職場復帰にあたって配慮すること

職場で一年半くらい前からひきこもり状態となり、現在休職中です。

治療を受けて元気になってきたので復職を考えていますが、寮での一人住まいに戻すのが心配です。

アパートへ移り、母親が同居しながら通勤する方法はどうでしょうか?

ご本人の症状にもよりますが、こうした場合はあくまでもご本人の希望に即した形で考えるほうがいいと思います。

どうしても寮生活に戻らざるをえないのであれば、まずは親御さんが心配している点も含めて、ご本人とよく相談なさってみてください。

ただ、確かに自宅からいきなり寮生活という流れには不安もあります。

段階的復帰ということから考えるなら、いったん寮からアパートに移り、そこでお母さんが同居して様子をみながら復職を進めるというアイディアは良い工夫であると思います。

また、復帰に際しては、最近は職場によってはリハビリ出勤を大幅に認めるところも増えてきています。

最初の一カ月は勤務時間を午前中のみとして、小刻みに時間を延長していくようにすれば、いっそうスムーズに復帰できるかもしれません。

こちらの対応策については、職場の上司や担当医とよく話し合っておかれたほうがよいでしょう。

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通院歴の偏見を本人にどのように説明すればよいか

精神科にかかっていると、将来社会に出たときマイナスになると本人が気にしています。

世間の偏見について、親はどう説明するといいのでしょうか?

残念なことですが、精神科に対するそのような偏見がいまだ根強いのも事実です。

ただ、実際問題としては、そうしたことが壁になって就労できなかったというケースはそれほど多くはありません。

むしろご本人自身の、そうした偏見に対する劣等感や引け目のほうが、克服への試みや回復の妨げになることが多いように思います。

たしかに精神科への通院歴があることは就労にさいしてはマイナス要因となるでしょう。

ただし、通院歴がわかってしまう事態は、ご本人が自己申告しない限り、ほとんどありえないと思います。

治療機関のスタッフには守秘義務がありますから、かりに悪意のある人が調査会社などを通じて調べようとしても、まず無理でしょう。

また実際に就労して、何かの弾みに通院歴がわかったとしても、それだけが理由で解雇されるということは、ほとんどないと思います。

ひきこもり事例には正直な人が多いので、就労面接の段階で、通院の事実を最初から打ち明けようとすることがあります。

しかし、精神科通院の事実を、まだしっかりと関係ができていない人たちに話すことは、あまりお勧めできません。

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偏見と誤解にさらされるのみで、雇用されることはまずありえないでしょう。

しかし首尾よく雇用されて、いったん人間関係ができてしまえば、もう気心が知れていますから、そこでクビになることはまずないと思います。

ですから、どうしても話さなければ気が済まないという人は、雇用されて何カ月かしてから打ち明けることをお勧めします。

このように、たしかに偏見は存在しますが、それは必ずしも乗り越えられない壁ではありません。

そのことを、ぜひご本人には理解していただきたいと思います。