ひきこもりの公的サポート
電話相談をできる場所
本人も家族も精神科を受診するのは抵抗があり、しかし身近に適切な支援組織もありません。
「ひきこもり」について電話相談は可能でしょうか?
可能です。
地元のひきこもり地域支援センターや精神保健福祉センター、保健所などにまずお問い合わせください。
また、さまざまなNPO団体なども電話相談部門を設けています。
まずはいずれかをご検討ください。
ちなみに東京都の「ひきこもりサポートネット」には、電話相談のほかにメール相談部門もあります。
自治体ごとにいろいろなサービスがありますので、ネットで検索されてみるのもいいでしょう。
また、青少年健康センターにも電話相談部門があります。
ただし、電話相談で可能であるのは、あくまでも情報提供に限られるという点はご承知おきください。
これらの部門は治療の段階で言えば、ほぼ第一番目の家族相談に該当するものです。
ご本人自身の治療相談は、電話相談では基本的に難しいと思います。
あくまでもご家族がお子さんの状態を評価し、どのように動くことが望ましいかという情報を得るためのサービスとお考えいただきたいと思います。
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家族会に参加してみる
家族会に参加したものかどうか迷っています。
息子は「そんなところに行くな」と言って怒るのですが、どうしたらいいのでしょうか。
ひきこもりに限定しても、今は大きな組織からごく小規模のものまで、さまざまな家族会があります。
もちろん青少年健康センターにも月に一度開催されるひきこもり家族会があります。
家族ぐるみで孤立しひきこもってしまいがちな家族にとって、家族会で他の家族と連携を深めることは、きわめて大きな意義を持っていると考えています。
ただ、通常の家族会は、外から講師を呼んで学習したり互いの体験を話し合ったりという形式でなされることが多いようですが、青少年健康センターの場合は参加人数が増えすぎたためもあって、すでに通常の家族会とはだいぶ異なった形態で運営されています。
まず、午前中は講師が対応方法について講義をする理論講座、午後が参加家族からの質問に講師が回答する相談会形式をとっています。
そして最後に、講師抜きで、家族同士の話し合い、すなわち本来の家族会が持たれて解散となります。
ただし、名目は家族会であっても、実質的には当事者も参加可能であり、最近は家族が持ち寄った品物を、ご本人たちがその場でバザーを開いて販売したり、喫茶店を開いてサンドイッチやコーヒーのサービスをしたり、という活動も加わっています。
つまり、純粋に家族指導の場というだけではなく、集団適応的な機能も加わりつつあるわけです。
また、この家族会から出された質疑応答やご家族・ご本人からの投稿を掲載した会報を毎月発行しており、家族会のメンバー全員に送付しています。
これは毎回は参加できない遠隔地の家族のためでもあり、また、時にはご本人自身がこの会報を読んで家族会に参加するようになったケースもあるようです。
このほかセンターには、ご家族をサポートする部門として家族グループカウンセリング、家族相談会、家族宿泊セミナーなどがあります。
いずれもひきこもり問題に限らず、ひろく思春期問題全般に対して柔軟に対応しています。
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自助グループとはどのようなところか
自助グループとは、どんなところなのでしょうか?
また、利用価値が高いものでしょうか?
ひきこもり限定の自助グループは、現在主だったものが関東の各県に一つずつあり、
また小さいものも増加しつつあるようです。
こちらの情報については、インターネットで各自お調べください。
自助グループとは読んで字のごとしで、さまざまな問題を抱えた人たち同士が自発的に集まり、相互に語り合い連帯する中で問題解決をはかっていこうという運動ですが、ひきこもりについてはそれほど治療を主眼においたものではなく、ただ集まってお喋りをしたり遊びに行ったりという活動をメインとしているところが多いようです。
自助グループは非常に有効な存在であると考えています。
今後も状態の良くなった当事者がリーダーとなって、どんどんグループの輪が広がることが望ましいと思っています。
一部の人がグループの場に沈殿して抜けにくくなるといった問題も指摘されていますが、自主的な集まりである以上、それはそれで仕方がないことです。
少なくとも、それは自助グループの責任ではありません。
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訪問支援活動とはどのようなものか
訪問支援活動を依頼するさいの基準はなんでしょうか?
現在、民間のNPO団体などを中心に、訪問支援を請け負う団体は増加しつつあります。
その傾向にはよろこばしい面ももちろんあるのですが、私は一抹の不安も感じています。
ひきこもっているご本人を訪問するということは、かなり侵襲性が高い行為です。
またケースによってはきわめて攻撃的になる可能性もあり、無造作に訪問がなされることによって、かえってこじれてしまう場合もないとは言えません。
なにも有資格者に限るべしと言いたいわけではないのですが、誰にでもできるという活動でもありません。
経験の豊かなスーパーバイザーのもとで、十分なトレーニングを受けたスタッフが慎重に事に当たることで、ようやく幾ばくかの成果を上げうるという性質の活動でしょう。
また、家族システムの十分な変容を抜きにして、いきなりご本人にアプローチすることは、家族が変わるきっかけを奪うことにもなりかねません。
訪問をするならば、家族指導を並行して行うことは、ほぼ必須の条件と言えるでしょう。
いうまでもなく、訪問活動の目的は、必ずしもご本人を外に引き出すことではありません。
引き出すことをもって「成功」とみなすような姿勢は、さまざまな対応上の問題につながりかねないでしょう。
むしろ訪問の意義は、他人が家に入り込んでくること、その他人とわずかでも時間、空間をともにすることにあると思います。
そのように考えるのであれば、まだ訪問を受け入れていないケースに対する訪問のあり方は、ひたすら説得を繰り返すようなやり方ではなく、定期的に訪問し、数分程度滞在して、最後に一言声をかけて退出する、という行為の繰り返しでも十分だと思います。
理想的になされた訪問支援は、家族指導のみならず、個人治療の段階にまで一挙に届く可能性も持っているため、今後の方法論的な洗練が待たれるところです。
NPO団体以外では、保健所の保健師による訪問活動や、十代の事例では児童相談所のメンタルフレンド事業、あるいはスクールソーシャルワーカーといった公的なサービスの利用も有益でしょう。
青少年健康センターにも、小規模ながらご本人の自宅を訪問し支援する部門があります。
ただし、センターの訪問支援活動は、ご本人が首都圏内に在住していて、すでに治療を受けたことがあり、訪問指導を受け入れていること、などが条件となるため、かなり対象は限られます。
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ひきこもり青年とのデイケア
デイケアやたまり場の探し方
社会参加にはまず「デイケア」や「たまり場」に行くのがいいとのことですが、地方に住んでいてあまり情報がないのです。
どうやって探せばよいでしょうか?
この場合も、まず地元の保健所と精神保健福祉センターにお問い合わせください。
すべてではありませんが、熱心なところではすでにひきこもりに限定したデイケア活動をはじめているところもあります。
民間NPO団体のたまり場活動も有意義ですが、これも地域格差があります。
こちらのほうはインターネットなどでお調べください。
ひきこもり経験者がつまずくのは、しばしば過去のひきこもり体験を他人にどのように説明するか、という点です。
ごまかしたり嘘をついたりすることが苦手な彼らは、自分の過去をありのままに初対面の相手に打ち明けて、かえって敬遠されたりした経験を持っています。
この点、ひきこもり経験者同士の集団であれば、そうした過去の履歴に対して劣等感をあまり持たずに参加することができるわけです。
ある程度対人経験になれたうえで、本格的な社会参加へとすすむためにも、こうしたステップはほとんど必須のものではないでしょうか。
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デイケアの見学をしたが、気が進まない
ひきこもって五年の二十四歳の息子です。
デイケアを勧められたけれども行きたがりません。
見学に行ったら三十代の人が三人いただけで、その三人は見るからに重症な印象で話しかけられなかったといいます。
どうしたものでしょう?
行かれたのは一般の精神障碍者向けのデイケアでしょうか。
もしそうであれば、行きづらいのも仕方ないかもしれません。
また人数も三人では少なすぎるように思います。
望ましいのは、やはりひきこもりの人向けの場所です。
もしそこがそういう場所で、宣伝活動が不十分なために人が集まっていないということなら(そういうデイケアは結構あります)、広く知られるようになれば、需要はありますから人は徐々に増えるはずで、そうなればご本人も通いやすくなるでしょう。
また、デイケアへの促しは基本的にご家族がすべきではありません。
すでに通院するところまでこぎつけているわけですから、あとは担当の医師にお任せしたほうがよろしいかと思います。
改善へ向かう中で、つい先へ先へと焦ってしまう親心もわかりますが、しかしとりあえず大切なことは、常にまず現状維持です。
無理にデイケアを促して、通院まで中断してしまっては元も子もありません。
気長にチャンスを持つことをお勧めします。
デイケアへ行っても続かない
親が勧めた若者の会などのたまり場に、本人は何度かいくのですが続きません。
現在は動こうとしても自分でこれ以上どうすることもできないストレスの高い状態です。
自分ペースを早くつかんで無理のないようにと親は望んでいますが、行動レベルの低下しているこの状態を親は見守るしかないのでしょうか?
折を見ながら新しいたまり場に誘いつづけるべきでしょうか?
これはご本人が、実際にそうした場所に参加したことがある、ということでしょうか。
たしかにグループにはなかなかなじめない、という方もいます。
しかし、グループのカラーもいろいろです。
おそらくご本人は、メンバーがあまりにも元気で騒々しいような場所は苦手なのではないでしょうか。
もしそのせいで行けなくなっているようなら、もう少し落ち着いた雰囲気の場所を探してみるのもいいのではないでしょうか。
人によっては、前の質問とは逆に、一般の精神障碍者向けのデイケアや作業所が安心できる、という人もいます。
事例では何人かが、そのような選択をして比較的うまくいったという経緯もあります。
親しい友達を作るには、そこでは少々難しいかもしれませんが、対人緊張が強い場合は、そうした場所からスタートするのも悪くないでしょう。
本当に障害を持つ人たちとのギャップが、ご本人をくつろがせてくれる場合も多いからです。
さまざまな場所を見学するなどして、慎重に選択されることをお勧めします。
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古い友人との付き合い
友人の手紙の効果
現在二十七歳、ひきこもって二年になる息子がいます。
昔からの友人たちに「葉書などでそれとなく支えてやってほしい」とお願いしてきましたが、かまわなかったでしょうか?
親御さんが水面下で動くことは基本的に反対なのですが、この程度であればかまわないと考えています。
昔からの友人関係はきわめて大切なものです。
ご本人は引け目や劣等感などから、お友達からの連絡にはほとんど応じないまま、関係が途絶えてしまっていたのでしょう。
またお友達のほうも、それほど嫌なら仕方ないとあきらめて遠ざかっていった可能性もあります。
つまり、双方が気を遣い合った結果疎遠になるという、大変残念なことが起きているわけです。
お母さんがお友達にお願いして、暑中見舞いや年賀状程度が定期的に届くようになるだけでも、ご本人は「忘れられていない」という安堵感を持つことができるかもしれません。
また、ふとした折りに「こちらから連絡をとってみようか」という思いに駆られることがあるかもしれません。
こうした、ハガキ一枚程度のつながりでも、ご本人の心理状態に大きな影響を及ぼしうることを考えると、お母さんのされてきた交渉の持つ価値は、きわめて大きいものだと思います。