わたしたちはなぜ内向型、あるいは、外向型となるのだろうか。
脳はその秘密をなかなか明かそうとしなかった。
最近になるまで、脳内で何が起こっているかを知るためには、行動を観察し、おそらくこういうことだろうと推理するしかなかったのである。
カール・ユングは、その知識を基に、内向性、外向性には生理学的根拠があるものと推測した。
ただし1900年代初頭、それを確かめる手段はなかった。
しかし脳をスキャンし、画像化する技術が進んだいま、脳内の通信経路と、それが人間の行動にどう影響しているかが、次第に明らかになりつつある。
たとえば、わたしたちは、脳内の地図をつくり、その各部の働きを特定の経験や行動に正確に結びつけることができる。
脳のどの機能が気質に影響を及ぼすかもまた、精神の地図の作製により証明される。
科学者らは脳の旅においていまだ探索段階にあるが、その全貌は驚くほど複雑なものらしい。
このことは、脳の働きに関して、各研究者の説が少しずつ異なるという事実に反映されている。
ここで紹介する説のいくつかは、まだ推論にすぎない。
より確実なことがわかるまでには、この先何年もかかるだろう。
とはいえ、わたしたちがいま、驚異に満ちた脳の秘密を解き明かす途上にあることはたしかだ。
人間はみな生まれながらに、各自の気質を形成する特定の素材、つまり、生得的特性を備えている。
その著書『感情の分子』で、キャンディス・パートは気質をその他の人間の特徴から切り離そうとしている。
パートはこう述べている―「専門家たちは、情動と気分と気質をも区別している。情動は一過性であり、その原因となるものを明確に特定できる。気分は数時間から数日間持続し、情動より原因を突き止めにくい。気質は遺伝的要因に基づくため、通常、(一定の変化は起こるが)生涯、その人についてまわる」
遺伝の影響下にあり、長期的にかなり安定しているという事実に加え、気質には他にふたつの基本的特色があるという点で、研究者らの意見は一致している。
気質は、個人ごとに異なり、人生の初期に現れるのだ。
気質を形成する基本的特性については、まだ完全なコンセンサスは得られていない。
しかし、内向性/外向性は、すべての人格理論家の特性リストに含まれており、気質を構成する要素としてもっともたしかなものと考えられている。
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気質は何に由来するか?
近年の遺伝子と脳の地図作成における大躍進は、人間の気性の謎を科学的な目で見つめることを可能にした。
チャールズ・ダーウィンの理論のいくつかは心理学の理論と結びつき、進化心理学という新たな視点をもたらした。
この分野の研究者らは、特定の行動戦略がわたしたちの生存と生殖のチャンスを増しているのではないか、と考えている。
ダーウィンは、ガラパゴス諸島のフィンチを研究した。
彼は、この鳥が環境に応じて、特異な形にくちばしを変化、発達させてきたことを発見している。
くちばしの多様性により、彼らはそれぞれ異なる食餌のニッチ(生態的地位)を得ることができた。
昆虫のみを餌とするのではなく、いまでは、昆虫、ベリー類、種、ナッツなどさまざまなものを食べられるのである。
このことは、種全体の存続のチャンスを高めた。
内向性と外向性に関する論文を初めて執筆したとき、ダーウィンの賛美者であるユングが気質というものを進化論的視点から見ていたのは明らかだ。
彼は気質の各バリエーションを、それぞれ独自の最適な環境―栄えるための自然なニッチ―を求めるものとしてとらえた。
人々が別個の最適な環境で繁栄すれば、人類全体の存続のチャンスは増す。
それは、自然が種を保存するやりかただ。
ユングはこう書いている―内向型の人間はエネルギーを保存し、少数の子どもを持ち、身をまもるすべを数多く備え、より長く生きる。
彼らは、シンプルな生活を重んじ、親密な結びつきを形成し、計画を立て、新しい手法を生み出す。
そのため、他者にも慎重であること、内省すること、行動する前に考えることを奨励する。
これに対して、外向型の人間はエネルギーを消費し、より多くの子孫を残す。
身をまもるすべはあまり持たず、短命である。
危険が迫ると、すばやく行動し、大きな集団のなかで折り合っていく能力を持つ。
彼らは、より遠くへと出かけて行き、新しい土地、食物、異なる文化を見つけようとする。
そのため、広範囲にわたる探検を奨励する。
自然界の安定はしばしば、相反するふたつの力の緊張によって保たれている。
敏捷なウサギと、動きの遅いカメ。
内向型と外向型。
男と女。
思考と感情。
人間には本来、順応性が備わっている。
わたしたちは、完璧な均衡、つまり、満足にいたらないようにできており、それゆえつねに生理的に柔軟であり、変化を求め続ける。
わたしたちには、数々の多様な環境に適応する力があるのだ。
人間の体の安定性は、適応しながら一様でありつづけるという原則の上に成り立っている。
体は、流動的バランスを維持する、対立し合う調整機構を持つ。
ちょうどシーソーのように、体のすべてのシステムには、興奮(”強める”)側と、抑制(”弱める”)側がある。
どこかの調子が狂うと、体のなかのさまざまな計器が信号を発する。
この信号が連結し合うフィードバック・ループを通ってシステムを調節し、体の流動的な恒常性を回復させるのである。
人類の歴史が始まって以来、人々はそれぞれの個人が持つ明らかな違いを説明しようとしてきた。
これらのちがいは、しばしば、バランスという観点から考えられた。
紀元前四、五世紀に起こった体液説は、大ブームを巻き起こし、バランスのとれた気質のためには、同量の四つの体液―黄胆汁、黒胆汁、血液、粘液―が必要であるとされた。
中国では、バランスとは、”気”という五つのエネルギー―木、火、土、金、水―を基礎とするものだった。
何世紀にもわたり、数々の異なる分類法が流行っては、すたれていった。
生得的気質という考え方は、ナチスがユダヤ人、ロマ、同性愛者といった人々を殺害する口実として人種的ステレオタイプを利用したことから、何十年も日の目を見なかった。
最近になってようやく、精神生物学における技術の進歩、双子の研究、動物の研究、脳に損傷を受けた人々の研究とともに、気質という観念が復活したのである。
人にはそれぞれの気質に適した環境があり、そのなかでこそ、快適に過ごし、最大限の力を発揮し、種に不可欠なバランスを維持しうるということは、かなり前から認められている。
これまでとちがうのは、気質が脳のしくみを土台としていることを、わたしたちが理解しはじめた点である。
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わたしたちの気質はどこで生まれるのだろうか?
その起源は遺伝子である。
わたしたちは、遺伝子によってつくられる。
遺伝子は、化学的なレシピを受け継いでおり、それが、各人の構造―細胞、組織、器官、系の形作る心身の複雑なネットワーク―を決定づける。
全人類の遺伝的処方箋は、99.9パーセントまで同じだ。
個人間のちがいは、たった0.1パーセントの自分特有の遺伝子素材によって生じる。
チンパンジーとヒトの遺伝子は98パーセントまで同じである。
ほんのちょっとした遺伝子素材の差で、わたしたちはまったくちがったものになっているのだ!
遺伝子はわたしたちの気質にどのように影響しているのだろう?
気質のちがいは、主として神経化学物質に由来するようだ。
わたしたちの遺伝形質のなかには、約百五十種の脳内化学物質と、神経伝達物質を処方するレシピとが含まれている。
神経伝達物質は、細胞から細胞へ指示を伝え、脳のあらゆる働きを指揮している。
現在までに約六十種の神経伝達物質が確認されており、主なものとしては、ドーパミン、セロトニン、ノルアドレナリン、アセチルコリン、エンドルフィンなどがある。
これらの神経伝達物質は、脳内に特定の経路を持っている。
その経路をたどりながら、神経伝達物質は、血液がどこを巡回すべきか指示し、また、脳の各中枢に流れる量を調節する。
血流のルートと量は、脳を含む中枢神経のどの部分が”オン”になるかを左右する。
外界に対する人間の反応、わたしたちがどう振る舞うかは、中枢神経のどの部分が活性化しているかで決定される。
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ここで、気質を左右する遺伝子のひとつ、D4DRの働きを追ってみよう。
忘れてならないのは、どんな遺伝子も単独で特定の気質を生じさせはしないということだ。
しかしD4DR、別名”新奇性追求遺伝子”については、広く研究が行われ、驚嘆すべき結果がもたらされている。
この遺伝子は、マット・リドレーがその著書『ゲノムが語る23の物語』で、行動に影響を及ぼすという理由から性格染色体と名づけた、第11染色体に収められている。
この遺伝子の研究により、形式を愛するヴィクトリア女王と、スリルを求めるアラビアのロレンスといった、気質のちがいの謎が解明されはじめた。
D4DR遺伝子は、ドーパミンに影響を及ぼす。
ドーパミンは、興奮のレベルを調節する、身体活動とその動機付けにきわめて重要な神経伝達物質である。
メリーランド州ベセズダの国立がん研究所、遺伝子構造・調節主任ディーン・ヘイマーは、D4DR遺伝子の研究のため、バンジージャンプ、スカイダイビング、アイスクライミングを好む複数の家族を対象にテストを行った。
彼らは新たな経験を得ることに情熱を傾けており、難解な音楽、異境の地への旅など、あらゆる斬新なものを好んだ。
その一方で、同じことの繰り返しや日常業務、退屈な人などには我慢できなかった。
また、しばしば衝動的で気まぐれであり、依存症におちいる可能性が高く、人生の早期に燃え尽きる恐れもあった。
さらに、早口で、人を説得するタイプであり、報酬を得るためなら進んでリスクを負った。
彼らの長所は、人生を思う存分満喫し、限界を押し広げていくところだ。
このような新奇性を追求する者たちは、D4DR遺伝子が長く、神経伝達物質ドーパミンに対する感受性があまり高くなかった。
したがって彼らは、より高値のドーパミンを生あ産するために、スリルと恐怖を経験しなければならないのだった。
ヘイマーはさらに、彼が”新奇性追求度が低い”と認定した人々を研究し、この人々はD4DR遺伝子が短く、ドーパミンに対する感受性は高いと結論づけた。
彼らは、静かな活動でも充分ドーパミンが得られるため、人生にさほどの”ドキドキ”を求めないのである。
彼らはまた、別の神経伝達物質からちがう種類の快感を得ている。
新奇性追求度の低い人々には、ゆったりペースの生活になんの不満もない内省的なタイプが多い。
彼らは、スリルを求めたり、リスクを負ったりすることに、楽しさよりむしろ不安を覚える。
几帳面で慎重なので、安心できる決まった手順やなじみ深いものを好み、それゆえ、あまりリスクは負わない。
突進する前に全体像をつかむのが好きで、長期的プロジェクトに集中するのが得意である。
また、気分にむらがなく、よい聞き手であり、信頼が置ける。
『遺伝子があなたをそうさせる』(草思社)でヘイマーが述べているように、「新奇性追求度の高い人も低い人も、快感を得たいという点ではなんら変わらない。
だれしも気持ちのいいことは好きなのだ。
しかし両者は、何によって快感を覚えるかという点で異なっている。
スコアの高い人の脳は、快感を得るために興奮を必要とする。
それと同じレベルの刺激によって、スコアの低い人は不安になる。
先の読める安定した状況は、スコアの高い人には退屈だが、低い人には心地よいのである」
この”新奇性追求度の低い人/高い人”は、内向型/外向型によく似てはいないだろうか?
この用語を使ってはいないものの、研究者らはもう一歩で気質の連続体の両極を特徴づけるところまで来たのだと思う。
ドーパミンは、内向型と外向型がそれぞれ脳のどの経路をもちいるか、また、その経路が彼らの気質と行動にどんな影響を及ぼすかに大きく関与しているようだ。
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外向型と内向型では神経伝達物質の通路が異なっていた
脳の研究は、脳内にそれぞれの神経伝達物質専用の異なる経路があることを明らかにした。
また、数々の研究が、内向型/外向型という人格特性にかかわる脳の経路を突き止めてきた。
しかし、実際に脳内を流れる血液の量とその場所を視覚的にとらえられるようになるまでは、それはまだ根拠ある憶測の域を出なかった。
デブラ・ジョンソン博士は、内向型/外向型の脳の働きに関する過去の実験を陽電子放射断層撮影法(PET)を用いて再現する初の試みについて、アメリカ精神医学ジャーナルで報告している。
ジョンソン博士は、アンケートの結果から内向型と外向型にグループ分けされた人々に、横になってリラックスするよう求めた。
彼らは少量の放射能を血液中に注入され、脳のもっとも活性化している部分を特定するためにスキャンにかけられた。
画像上には、赤や青などさまざまな明るい色により、脳のどこにどれだけの血液が流れているかが示された。
博士は、もっと原始的な実験がすでに示唆していたふたつの所見を得た。
第一に、内向型の人の脳へ流れる血液量は、外向型の人より多かった。
血流量が多いということは、より多くの内的刺激を得ているということだ。
ちょうど指を切ったときのように、体のある部分への血流量が増せば、その部分は必ず、通常より敏感になるのである。
第二に、内向型の人と外向型の人の血液は、それぞれちがった経路をたどっていた。
ジョンソン博士は、内向型の人の経路は、より複雑で、内部に集中していることを知った。
内向型の人の血液は、記憶する、問題を解決する、計画を立てる、といった内的経験にかかわる脳の各部へと流れていた。
この経路は長く複雑だ。
内向型の人は、内部の思考や感情に精力を注いでいたのである。
ジョンソン博士は、外向型の人の作用の速い経路を突き止め、彼らの行動やその動機付けに影響を及ぼす情報がどう処理されているかを明らかにした。
外向型の人の血液は、視覚、聴覚、触覚、味覚(臭覚はのぞく)が処理される脳の各部へ流れていた。
彼らの主要な経路は短く、さほど複雑ではなかった。
外向型の人は、自分の外、つまり研究室で起こっていることに注意を向けていた。
彼らは感覚情報に浸っていたのだ。
この研究は、内向型/外向型という気質の謎を解く鍵となるコンセプトを裏付けた。
ジョンソン博士は、内向型と外向型の行動のちがいは、脳の異なる経路を使うことに起因すると結論づけた。
その経路が、わたしたちがどこに注意を向けるか―内部か、外部か、を左右するのである。
外向型のDさんは、歓声どよめくフットボールの試合に胸をおどらせ、目と耳を存分に楽しませる。
興奮し、ハーフタイムには、その短期記憶を使ってあらゆるプレイを取り上げながら、相棒のNさんと試合についておしゃべりする。
スタジアムをあとにするとき、彼女は元気づき”ハイ”になっている。
内向型のPさんは、大好きなモネの絵を鑑賞しようと美術館へ出かける。
美術館へ入ると、特に混んでいなくても心理的に圧倒され、自分では気づかないまま、ただちに焦点をしぼりこむ。
彼はまっすぐにモネの絵のある部屋へ向かう。
そして、長期記憶をさぐり、前回同じ絵を見たときと現在の気持ちとを比較しながら、モネの絵とそれに対する自分の感想について考える。
彼は、将来ふたたびここへ来ることを想像し、穏やかな胸のうずきとときめきとをこの経験に結びつける。
また、その絵の淡い色調について、頭の中で自分自身と話し合う。
彼は気持ちよく美術館をあとにする。
内向型と外向型がそれぞれ作動させる脳の正確な経路を知ることにより、わたしたちがなぜ一定の行動をとるのか、その理由の一部は解明された。
しかし、もっとも重要な鍵は、この先にある。
気質が違えば、脳が快感を得る方法も異なる
内向型と外向型の血液が別個の経路をたどるというだけでなく、それぞれの経路は異なる神経伝達物質を必要とする。
ディーン・ヘイマーは、”新奇性追求者”は、その遺伝子ゆえにドーパミン需要が大きく、そのため、スリルを追い求めずにはいられないことを発見した。
彼らは極端な外向型に非常によく似ているようだ。
そして、外向型の使う経路は、ドーパミンによって活性化されることがわかっている。
ドーパミンは、運動、注意力、覚醒、学習にもっとも密接にかかわる強力な神経伝達物質である。
『脳と心の地形図』(原書房)の著者、リタ・カーターはこう述べている。
「過剰なドーパミンは、幻覚や妄想を引き起こすようだ。一方、ドーパミンの不足は、震え、随意運動の始動不能を引き起こすことが知られており、虚無感、無気力、憂鬱に関係している。ドーパミンの減少はまた、注意力と集中力の欠如、渇望感や引きこもりにつながる」適量のドーパミンを維持することは、体にとってきわめて重要なのだ。
ドーパミンにはもうひとつ大きな役割がある。
『心の状態』の著者、スティーヴン・ハイマンはこう述べている。
「ドーパミン巡回の役割を特徴づけているのは、その報酬システムである。それは、事実上こう言っているのだ-いまのはいいぞ。これをまたやろう。どんなふうにやったか、正確に覚えておこう」コカインやアンフェタミンに強い常習性があるのは、このためだ。
これらの薬物は、ドーパミンを増やすのである。
外向型の人はドーパミン感受性が低く、大量にそれを求める。
では、どうすればよいのか?
脳にはドーパミンを放出する部分がいくつかある。
しかし外向型の人は、ドーパミンの助手、アドレナリンに頼っている。
アドレナリンは、交感神経系が働くことで放出され、脳内にさらにドーパミンをつくり出す。
したがって外向型の人の場合、活動的になればなるほど、ドーパミンは増え、”快感のヒット”が放たれる。
そのため、外向型の人は、どこかに行ったり、人に会ったりするとき、気持ちがよくなる。
これに対して、内向型の人はドーパミン感受性が高い。
ドーパミンが過剰になると、彼らは刺激が多すぎると感じる。
内向型の人の脳の主要な経路には、まったく別の神経伝達物質、アセチルコレンが使われている。
スティーブン・コスリンとオリバー・ケニーグは、『ウェットな精神』のなかで、脳内のアセチルコリンの経路を特定した。
そしてそれは、ジョンソン博士が述べた内向型の人の使う脳の経路と同じなのである。
アセチルコリンは、脳と体の数々の生命維持機能にかかわる、もうひとつの重要な神経伝達物質だ。
それは、注意力と学習力(ことに知覚学習)に働きかけ、穏やかな覚醒状態を維持する能力や長期記憶を利用する能力に影響を及ぼし、附随運動を作動させる。
また、何か考えたり感じたりしている際に、快感を引き起こす。
今日のアセチルコリン研究の多くは、内向型の脳と体に関する私たちの見解を裏付けている。
アセチルコリンは真っ先に見つかった神経伝達物質だが、他の神経伝達物質が発見されると研究はそちらに集中した。
しかし最近になって、アセチルコリンの欠乏とアルツハイマー病との関係が明らかとなり、この発見によって、アセチルコリンと記憶蓄積や夢を見るプロセスとの関係についての研究がさかんになった。
アセチルコリンは、わたしたちの睡眠と夢に大きな役割を果たしているようだ。
わたしたちはレム睡眠のときに夢を見る。
アセチルコリンは、レム睡眠のスイッチを入れて夢を引き起こし、続いて、体を麻痺させて(つまり、随意運動を停止させて)、夢で見ていることが”行動化”されないようにする。
研究者らは、眠りが必要なのは、レム睡眠の間に記憶が記号化され、短期記憶から長期記憶へ送り込まれるためであることを証明しつつある。
『脳の内部』の著者、ロナルド・コチュラクが述べているように、「アセチルコリンは記憶装置を働かせる潤滑油であり、それが枯渇するとこの装置は機能停止におちいる」のである。
もうひとつ、おもしろいのは、エストロゲンがアセチルコリンの減少を防ぐという話だ。
これは、エストロゲン値が下がる閉経期に、女性が記憶障害を起こす理由のひとつである。
というわけで、内向型の人は、穏やかな気分を保ち、なおかつ、憂鬱や不安を感じないために、多すぎも少なすぎもしない適量のドーパミンと適量のアセチルコリンを必要とする。
この快適ゾーンはかなり狭い。
内向型と外向型がそれぞれどの神経伝達物質を使っているかを知ることは、きわめて重要である。
なぜなら、脳内で神経伝達物質が放出されると、それは同時に自律神経系を作動させるからだ。
自律神経系は、精神と体を結びつける系であり、わたしたちがどう外界に反応し、どう行動するかを左右する。
どの神経伝達物質がどの経路を流れているか、それが自律神経中枢の各部とどう結びついているか、このふたつのつながりが気質の謎を解き明かす鍵だとわたしは思う。
外向型の人が、ドーパミン/アドレナリン、エネルギー消費、交感神経系と関係が深いのに対し、内向型の人はアセチルコリン、エネルギー保存、副交感神経系と結びついているのである。
行動と鎮静―交感神経と副交感神経
視床下部は、脳の底部に位置し、サイズは豆粒大で、体温、情動、空腹、喉の渇き、そして、自律神経系を調節する。
この名は、「自治」を意味するギリシャ語、に由来する。
自律神経系は、ふたつの枝に分かれる。
すなわち、交感神経と副交感神経である。
ちょうど自動車のアクセルとブレーキのように、これらは互いに逆の働きをする。
両者は、心拍数、呼吸、血管の収縮などの不随意的な無意識の機能をコントロールし、体液の恒常性の維持にもっとも直接的にかかわっている。
またフィードバック機能を持っていて、自らの放出する神経伝達物質を介して脳へ指令を送り、エネルギー・レベル、気分、健康状態を調整する。
行動を起こす必要が生じると、交感神経系―よく”闘争/逃亡”システムと呼ばれる―が始動する。
これを”フルスロットル・システム”と呼ぶ。
このシステムは、脳内の興奮性神経伝達物質ドーパミンによって活性化する。
内にこもる必要が生じると、副交感神経系―これを”スロットルダウン・システム”と呼ぶ―が体をリラックスさせ、心を鎮める。
このシステムは、脳内の抑制性神経伝達物質アセチルコリンによって活性化する。
要となるこれらふたつの系、フルスロットル・システム(交感神経系)とスロットルダウン・システム(副交感神経系)こそ、外向型/内向型という気質の基礎だと思われます。
『情動の調節と自己の起源』の著者、アラン・ショア博士は、人はそれぞれ、これらふたつの系の間のどこかに拠点を持つと述べている。
その拠点が、各人にとって、最大のエネルギーが得られる、もっとも心地よい場所なのだ。
生涯を通じて、わたしたちは自分の拠点の周辺で揺れている。
ショア博士は「気質こそ鍵だ」と言っている。
自分の拠点が分かれば、わたしたちはエネルギー・レベルを調節し、目的を達成することができる。
結論の裏付けとしては、デイヴィッド・レスターとダイアン・ベリーという研究者が、アンケートに基づいて内向型と外向型をより分け、血圧の高低、身体活動レベル、口の乾き、空腹感の頻度などの生理反応を調べている。
彼らは雑誌「知覚と運動のスキル」で、内向型の人においては自律神経系の副交感神経系が優位であると報告した。
フルスロットル・システム―エネルギーを増やす
たとえば、夜道を歩いているとき、ふいに大きなコヨーテが現れ、頭を低くし、夜食にどうかと値踏みしながら、あなたのまわりをぐるぐる歩きだしたとしよう。
あなたの体は、フルスロットル・システムを始動させる。
瞳孔はより多くの光を取り込むべく拡張し、心臓の鼓動は速くなり、各器官や筋肉にもっと酸素を送り込めるよう血圧は上昇する。
傷を負った場合の出血を減らすため血管は収縮し、脳は超警戒態勢を維持すべくシグナルを発する。
より多くのエネルギーを供給するため血糖値と遊離脂肪酸値は上昇する。
消化、唾液分泌、排泄の行程の速度は落ちる。
こうした”闘争/逃亡”システムは、現実か架空かを問わず、非常時に作動する。
それは、積極的な外部への対抗システムだ。
それによってわたしたちは、いざというとき闘うか逃げるかを瞬時に決断できる状態になる。
思考は抑制され、精神は行動にのみ集中する。
この場合なら、腕を振り回して大声でコヨーテを脅すか、最後の手段として逃げるかするために、このシステムが必要となる。
人間の体は、二歳近くになるまで、主にこのシステムで動いている。
それは、わたしたちにエネルギーと、世界を探究する意欲を与えてくれる。
これが、発達心理学者の言うところの”練習期”だ。
大人になると、交感神経系はわたしたちを新しいものへと向かわせる。
食べ物、新境地、仲間づきあい―どれも生きていくのに必要なものばかりだ。
活動中や、好奇心を抱いたとき、または、思い切ったことをするとき、わたしたちはこのシステムを働かせている。
たとえば、野球場で好きなチームに声援を送っているときも、このシステムが”快感のヒット”を脳に送り、エネルギーを生み出す。
それはまた、エネルギー源として、グリコーゲンと酸素をも発生させる。
これまで見てきたように、外向型の人は活動によって元気づく。
しかし、フルスロットル・システムは消費志向であり、体を回復させはしない。
したがって、スロットルダウン・システムの使い方を学ばないと、外向型の人は燃え尽きて、健康を損なう恐れがある。
彼らは、睡眠障害、消化障害、心臓病、免疫系の疾患を発症しかねない。
スロットルダウン・システムは、外向型の人にはエネルギーも”快感のヒット”も与えない。
それらを与えるのは、フルスロットル・システムなのだ。
しかし、思考、感情、身体感覚、体からのメッセージに留意することで、スロットルダウン・システムの使い方を学び、内的な能力を伸ばせば、外向型の人は、持って生まれた外向性の強みをバランスよく維持することができる。
スロットルダウン・システム―エネルギーの節約
山登りの途中、あなたは岩にもたれかかって、なだれ落ちる滝をじっと見つめている。
と、突然、ガラガラという音が耳を打つ。
それはすぐそばから聞こえてくる。
ゆっくり頭をめぐらせると、そこにはとぐろを巻いたガラガラヘビがいて、尻尾の先を震わせながら、きらきら光る小さな目でまっすぐあなたを見つめている。
あなたの体は恐怖に凍り付き、すべてがスローモーションで動く。
脳の中で、電球がパッと灯る。
さあ、どうする?
これは、エネルギーの節約と保存を担うシステム、副交感神経の反応だ。
この系は、力を蓄え、内へこもるよう、体にシグナルを送る。
光の取り込みを制限すべく瞳孔は収縮し、酸素消費量を減らすため心拍数と血圧は低下する。
筋肉は弛緩し、消化、分泌、排泄は促進される。
そのため、この系は”休息・消化”システムと呼ばれることがある。
外界に対する注意力は低下し、内部での注意力は高まり、考え、熟慮することが可能になる。
あなたは、岩と危険なヘビからじりじり離れていくことにする。
この系は、子供が十八カ月から二歳になると、より活発になる。
わたしたちは落ち着いて、トイレット・トレーニングや言語学習に集中できるようになるのだ。
ハンモックに横たわって雲を見つめているときや、ただくつろいでいるとき、あなたが作動させているのは、この系である。
体はエネルギーを消費するのではなく蓄えている。
のんびり物思いにふけっているとき、内向型の人の”快感のヒット”は放たれる。
この系は力を回復させ、いざというときフルスロットル・システムを使えるようにする。
外向型の人の場合と違って、フルスロットル・システムは、内向型の人にはエネルギーも”快感のヒット”も与えない。
内向型の生理を備えた人々は、通常、それだけのドーパミンとアドレナリンが出れば、刺激が多すぎると感じる。
ときには、それが楽しい場合もあるが。
スロットルダウン状態に長く留まりすぎた内向型の人は、ときとして、鬱になり、やる気が失せ、めざす目標を達成できない欲求不満を感じるようになる。
彼らは、立ち上がって外に出ていくために、自らのフルスロットル・システムを働かせなくてはならない。
それには、不安感と過剰な刺激のコントロール法を学ぶ必要がある。
緊急時にどちらのシステムが作動するか?
当然のことながら、わたしたちにはその時々で交感神経と副交感神経を使い分ける能力が必要である。
しかしストレス下では、各人の優位な系が始動してしまう。
たとえば、数年前、AさんとAさんの夫のMさんは車の事故に巻き込まれた。
夜、狭い二車線のハイウェイを走っていたところ、突如、何か大きなものがフロントガラスめがけて飛んできたのだ。
Mさんはとっさにハンドルを切って横へそれた。
幸い、対向車線を走っている車はなかった。
巨大な空飛ぶ物体は、わたしたちには当たらず、後続のステーションワゴンにぶつかった。
Mさんは車を路肩に寄せて停めた。
Aさんは動けなかった。
体はまるで麻痺状態で、呼吸は遅くなっていた。
Aさんは、Mさんに車を降りてほしくなかった。
頭には、対向車にはねられる彼の姿が浮かんでいた。
Mさんのほうは、心臓を激しく鼓動させ、ただひたすら行動することしか考えていなかった。
彼は怪我人がいないかどうか確かめるため、ドアを開けて飛び出していった。
Aさんが自らの優位な系を作動させ、スロットルダウン状態(停止して吟味する状態)に入ったのに対し、Mさんも彼の優位なシステムを作動させ、一気にフルスロットル状態(飛び出して行動する状態)に突入したのである。
前述の物体は、囲いから逃げ出し、道路にさまよいこんだラバだとわかった。
不運なラバは、ピックアップトラックにはねられ、そのフロントガラスにたたきつけられた。
それから、わたしたちの車をかすめて(これはMさんがみごとなフルスロットル反応を見せ、すばやくハンドルを切ったおかげだ)、後続の車の屋根にぶつかったのだった。
車を降りまいとしたわたしのスロットルダウン的躊躇は、賢明である。
あたりは真っ暗なうえ、二車線のハイウェイでは車が絶えなかったのだ。
外に出るのは危険だった。
Aさんは状況を分析したいと思った。
これはいい戦略だ。
一方、怪我人がいないかどうか確かめようというMさんのフルスロットル反応も、役に立つ。
結局、ひどい怪我をした人はいなかった。
みんな運がよかったのだ。
かわいそうに、ラバだけは運がなかった。
その死体は、何も知らない旅行者がまた轢いたりしないよう、数人の男性が道の外に引きずっていった。
要約すると―人はみなバランスを保つためにふたつの系を両方とも必要とするが、わたしたちは遺伝的、環境的にどちらか一方をより多く使うようにできており、ストレス下ではそれがいっそう顕著になる。
Aさんは、自律神経系のこのふたつの面が内向型/外向型連続体を生み出しているものと見ている。
人はみな自律神経系の両面を働かせるが、それぞれの脳と神経伝達物質がその一方を優勢にするのである。
脳から読み解く内向型人間の行動パターン
これまで見てきたように、内向型の脳では外向型の脳より、内的活動や思考がさかんである。
内向型の脳は、長く遅いアセチルコリン経路に支配されている。
アセチルコリンはまた、スロットルダウン・システム(副交感神経系)を作動させるが、このシステムは体の特定の機能をコントロールし、内向型人間がどう振る舞うかを左右する。
脳が忙しく働いているという点から見て、内向型人間はおそらく―
- 話しているときは、言葉をさがしたり考えたりすることに集中するため、あまり目を合わせない。話を聞くときは、情報を取り込むためによく目を合わせる。
- その知識の豊かさで周囲を驚かせることがある。
- 注目を浴びるとしりごみする。
- ストレス下や集団のなかで、または、疲れが出たときに、どんより、ぼんやり、げんなりした様子を見せることがある。
長い長いアセチルコリン経路に支配されているため、内向型人間は―
- 考え事の途中から話し出し、周囲を戸惑わせることがある。
- 記憶力はいいが、その記憶を取り出すのに時間がかかる。
- よく知っていることを忘れてしまうことがあり、自分の仕事を説明するのにしどろもどろになったり、一時的に使いたい言葉が出てこなかったりする。
- いま頭で考えたばかりのことを、言葉にしたと勘違いすることがある。
- 眠ったあとは、アイデア、考え、感情がよりはっきりする。
- 書いたり、しゃべったりしないと、自分の考えがはっきりわからないことがある。
副交感神経系が優位なため、内向型人間は―
- なかなかやる気が起きない、あるいは、動き出さない。怠惰に見えることがある。
- ストレス下での反応が遅い。
- 態度が穏やか、または、ひかえめである。歩いたり話したり食べたりするのが遅い。
- タンパク質の摂取と体温を調整する必要がある。
- エネルギーを回復するために休憩をとらねばならない。
脳から読み解く外向型人間の行動傾向
外向型の脳は、内向型の脳ほど内的活動を行わない。
その代わり、刺激を収集し、短く速いドーパミン経路に燃料を補給するために、外界をスキャンしている。
脳からの信号はフルスロットル・システム(交感神経系)へと送られるが、このシステムは体の特定の機能をコントロールし、外向型人間がどう振る舞うかを左右する。
脳が絶えず新しい刺激を求めているという点から見て、外向型人間はおそらく―
- 外に刺激を求める。長くひとりでいることを嫌う。
- 話しているときは、相手の反応を取り込むためによく目を合わせる。話を聞くときは、周囲で何が起きているかに注意するため、あまり目を合わせない。
- 話すのが好きである。また話術に長けている。注目や脚光を浴びると元気が出る。
短いドーパミン経路に支配されているため、外向型人間は―
- あと先考えずにしゃべる。聞くよりもよく話す。
- 短期記憶に優れ、すばやく考えられる。
- 時間制限のあるテストや緊張下でのテストに強い。
- 議論、新奇なもの、さまざまな経験によって活気づく。
- すらすらとよどみなく世間話ができる。
交感神経系が優位なため、外向型人間は―
- ストレス下ですばやく行動する。
- 体を動かしたり、運動したりするのが好きである。
- エネルギー・レベルが高く、頻繁に食べる必要がない。
- することがないと落ち着かない。
- 人生半ばで衰えたり、燃え尽きたりする恐れがある。
右脳と左脳の気質関係
自然はふたつの頭脳を妻わせて脳をつくった。
脳は半分ずつ、右と左の大脳半球に分かれている。
なぜかこのふたつの半球は、別個の脳であるかのように機能する。
ところがそれと同時に、ひとつのユニットとしても働くのだ。
この一対の半球は、束になった神経線維の橋(脳梁)で結ばれている。
それによって両サイド間の絶え間ない情報交換が可能になっているのだが、それぞれの半球には、独自の専門的機能と作用があるようだ。
研究により両半球を同等に使う人がいることもわかっているが、自律神経系の場合と同様、ほとんどの人はどちらか一方の半球に、より高い頻度でたよっている。
そして同じ内向型人間でも、”右脳型”と”左脳型”では、ちがった才能、行動、限界を示すのである。
人生のはじめの二年間、人は主としてシンボル指向の右脳を使う。
だから赤ん坊は、生後九~十カ月で、手まね言語を覚えられるのだ。
彼らの右脳型の頭脳は、シンボルと意味を結びつけられる。
たとえば手を振るのは「バイバイ」というように。
左脳型の頭脳は、言葉を話しはじめる生後十八カ月から二歳ごろに活発になる。
思い出してほしいのは、ちょうどこのころスロットルダウン・システムも機能しはじめるということだ。
”練習期”は終わりに向かい、わたしたちは考えたり話したりできるようになるのである。
右脳型人間―たとえ話で説明する感覚系
成熟した脳半球はそれぞれ、独自の強みと弱点、情報処理方法、特有の能力を持つ。
右脳型の才能は、内発的かつ創造的な無限の贈り物を世の中にもたらす。
右脳はときとして、無意識の頭脳と呼ばれる。
それは言語能力に乏しく、思考のプロセスを言葉にできない。
その考えはむしろ、急速に、複雑に、抽象的に形成される。
右脳型の人は、複雑の仕事を同時にこなせる。
彼らは感情豊かで、ひょうきんだったり茶目っ気があったりする。
右脳の機能は、説明がむずかしい。
というのもそれは、そもそも言葉にならず、抽象的、全体論的、同時多発的で、とりとめのないものだからだ。
たとえて言うなら、絶えず変化する色とりどりの万華鏡だ。
そのなかでは、色の断片が混ざり合い、さまざまな模様をつくりあげる。
右脳型の精神は、ボディランゲージ、行動、よどみないダンス、さまざまな芸術様式で表現される。
それは、リズム、白昼夢、イメージ、色、顔の再認、模様の考案といった人間生活の創造的側面に携わっている。
もしあなたが右脳型なら、こんな傾向があるだろう。
- 問題解決にあたって、茶目っ気を発揮する。
- 物事への反応に感情を交える。
- ボディランゲージを難なく理解できる。
- 大いにユーモアのセンスがある。
- 主観的に情報を処理する。
- 即興的である。
- 説明に隠喩や例えを用いる。
- 一度に複数の問題にあたる。
- 会話のなかで手振りを多用する。
- パターンを認識し、絵によって考える。
- 問題の答えを大まかに、広がりのあるものとしてとらえる。
- 自分の知識の深さを認識していない。
左脳型人間―具体例で説明する理論系
人間が種としての繁栄をとげられたのは、左脳の力によるところが大きい。
左脳は、複雑な計画を実行する助けとなる。
もしあなたが左脳優位者なら、右脳型の人とはまったくちがうかたちで情報を処理するだろう。
左脳型の人は、物事を一度にひとつずつ処理していく。
一連の課題がある場合は、ひとつ終えてからつぎにとりかかるという方式を好む。
彼らはよくリストをつくる。
また、短期記憶、反復学習、話す技能に依存している。
左脳型が多いように思えるのは女性より男性かもしれない。
左脳型の人は、几帳面で規律正しく時間に正確である。
彼らは言語化された情報を重く見る。
また、データを分析するように具体的に考える傾向があり、情報は論理的に区分けして整理する。
決断を下す際は、あまり感情に左右されない。
ユーモアのセンスがあるとしたら、それはウィットに富んだ皮肉っぽい部類に属するものだろう。
また彼らは、ひかえめで冷静な超然とした人に見えるかもしれない。
左脳優位の内向型人間は、世間の人の抱く内向型のイメージにより近い。
彼らは人とのつきあいをほとんど必要とせず、その興味はしばしば仕事や趣味に集中する。
また、不安から自分をまもるために、否認や強迫的考えに依存する場合がある。
もしあなたが左脳型なら、こんな傾向があるだろう。
- 行動を起こす前に、プラス面、マイナス面を検討する。
- きれい好きで、几帳面である。
- 感情ではなく事実に基づいて決断を下す。
- 説明するとき、具体例を挙げる。
- 正しいかまちがっているか、善か悪かをよりどころに考える。
- 経験を客観的に処理する。
- 時間の観念が強い。
- 一度に一歩ずつ進む。
- 社会的シグナルになかなか気づかない。
- 分類するのが好きである。
- 言葉や数字に強い。
- 正確な答えを追求する。
内向型にも右脳タイプと左脳タイプが存在する
内向型の人みんなが、同じように考えるわけではない。
同じ内向型人間でも、右脳型は左脳型とは、かなりちがう方式で情報を処理し、言語を使い、直観を働かせる。
もしあなたが記事を読んでいて、言っていることが自分にはあてはまらないと思ったとしたら、その内容は脳のどちらが優位かに左右される問題なのかもしれない。
たとえば左脳型の内向型人間は、人前で話すことが右脳型ほど苦にならないだろう。
したがって、内向型人間はときどき言葉が出てこなくなると言われても、あなたはまったく共感を覚えないかもしれない。
前の二項を読みながら、自分が右脳型か左脳型かを考えてみよう。
自分のタイプを見極めて強みを活かす
内向型の人にとって、自分の脳のどちらが優位かを知ることは、自己をよりよく理解するために重要である。
左脳優位の内向型の人のほうが、内向型として生きやすいのではないかと思う。
彼らは人とのつきあいをあまり必要としないので、ひとりで過ごすことにさほど葛藤がないだろう。
また、しばしば、右脳優位の内向型より弁が立ち、論理的なので、学校、職場、会合などでも成功を収めやすい。
エンジニア、会計士、コンピューター・マニアの多くは、この人物像にあてはまる。
これらの人々はさほど感情豊かでなく、どちらかと言えば視野が狭いので、自分のことが気にならないだろうし、人とちがっているのに気付きさえしないかもしれない。
右脳優位の内向型の人は数々の才能を持つが、それらの多くは伝統的職能には変換しがたい。
彼らは創造性に富み、他の人からはエキセントリックに、または、興味深く見えるだろう。
右脳優位の内向型人間は、感情豊かで視野が広い。
そのため、人とちがっていることにきわめて敏感である。
教育制度は、左脳優位者向けにつくられていて、論理性、言語能力、分析的探究、機敏な反応(時間制限のあるテストでの高得点)、覚えの早さを要求する。
右脳優位の子どもたちは、しばしば不利な立場に置かれ、正当に評価されない。
ダニエル・ゴールマンの著書『EQ-こころの知能指数』があれほどの人気を博したのは、彼が右脳優位の人々の長所を高く評価したからである。
右脳優位の人々は、誤解されていると感じ、落ち込むことが多いのだ。
右脳と左脳のどちらが優位かは、学習のしかたに影響を与える。
もしあなたが右脳寄りなら、新しい事柄を学ぶのに最適の方法は、全体像をイメージすることだ。
頭の中で絵として描くことができれば、そのコンセプトはより理解しやすくなるだろう。
したがって図や実例はもっとも効果的だ。
理論や説明は右脳優位の人の頭には入りにくい。
彼らの学習力は、習いながら実行したり質問したりすることでアップする。
右脳優位の人々は、解説や叙述的考えより、隠喩やたとえによく反応するのである。
左脳優位の人は、新しい情報を順序良く取り込む。
彼らは、反復学習によって、または、原理や要点や理論を理解することで、物事を学ぶ。
したがって新しい技術を用いる際は、まずその理屈を理解しなければならない。
彼らは文字言語や権威ある情報源の言葉を重く見る。
だれかの言ったことを信じるには、その情報を裏付けるデータを必要とするだろう。
自らの脳の働きを理解することによって、あなたは罪悪感と羞恥心を和らげることができる。
自身に最適の環境をつくり出すこともできるし、内向型特有の長所に対する自己評価をより高めることもできるだろう。