九時から五時までの脅威
内向型の人にとって、職場は落とし穴でいっぱいだ。
ほとんどの職場は、彼らの快適ゾーン外にある数々のスキルを要求する。
内向型の人がしばしば、単独で、または、在宅で働いたり、融通のきく職に就いたりするのは、そのためだ。
しかし、内向型の人すべてが、無理のない完璧なニッチで働けるわけではない。
したがって、九時から五時までのスケジュールに潜むさまざまな脅威の回避方法を学ぶことは、彼らにとってきわめて重要だ。
セラピストは、地元のある会社から絶えずもめているふたりの従業員のカウンセリングを依頼された。
Jさん(外向型の部長)とCさん(内向型の社員)の不和は、それで解決するのではないかと期待されていた。
セラピストはまずCさんと話をした。
「Jさんはいつも、わたしを質問攻めにするんです。やめてくれ、そんなにせかすな、少し待ってくれ、と言いたいですね。彼は考える時間をくれないし、こっちの意見を聞こうともしない。
ただしゃべりまくって、結局、自分のやり方で仕事を進めることにしてしまうんです。
しまいにはこっちは、頭はがんがんするし、胃はきりきり痛み出す始末です。
このごろは夜もよく眠れないんです」
つぎにセラピストはJさんと話した。
「まったくもう、髪をかきむしりたくなりますよ。
Cさんときたら、ひどく引っ込み思案でね。
オフィスにこもりきりなんですよ。
会議の席でも黙りこくっていて、なんの意見も出さないし。
あの男には協調性がないんです」
このふたりがなぜ始終、角突き合わせているのか、セラピストにはすぐわかった。
一方が外向型で、もう一方が内向型だからだ。
どちらも相手を理解していないため、お互いを非難し合う結果となる。
これでは、生産的な職場環境は得られない。
オットー・クルーガーとジャネット・トゥーゼンは、その著書『仕事場における性格学入門』で、職場での内向型と外向型のちがいについて述べている。
「個性をはっきり打ち出す外向型とちがって、内向型はしばしば自分の最良の部分を隠している。
外向型の人を前にすれば、あなたには相手が何者なのかが見える。
これに対して、内向型の場合、見えているのはその人物の一部のみだ。
内向型の人のもっとも豊かで、もっとも信頼できる部分は、外の世界に明かされるとはかぎらない。
彼らの心をひらかせるには、時間と信頼関係と特殊な環境が必要なのだ」
■参考記事
内向型と外向型はどこが違う?
内向型人間の心理
生まれつきの内向型
パートナーの内向型、外向型組み合わせ特徴
内向型の子育て
どうして外向型は社内で受けがよいのか
机に向かってこつこつ働く内向型の人が、外向型の人ほど有能に見えないのは、さほど不思議なことではない。
内向型の編集者、Iさんはあるときこんなことを言っていた。
「わたしがやっと気を許して話をするようになると、どの人もまったく同じ驚きの表情を見せるんです。
みんな、わたしがどれほど専門分野に詳しいかを知って、びっくりするんですよ。黙っているからと言って、無知だということにはならないのにね」
外向型の人は机の前を離れて、みんなのところへ行き、挨拶する。
彼らはつねに社内の噂に通じており、仕事のあとや週末に同僚と交流するのが好きだ。
また、多くの場合、親切で、表現も豊かである。
自分の手柄について語るのを好み、脚光を浴びるのも厭わない。
それどころか、まぶしい光のただなかにいたがるくらいだ。
会議では、どんどんアイデアを出す。
人前で話すのが得意だし、電話でやりとりするのも好きだ。
なんにでもかかわりたがり、忙しげにあちこち飛び回っている姿がよく見られる。
また、決断がすばやく、活発にブレインストーミングし、ちょっとした舌戦くらいは苦にしない。
むしろ、議論は楽しいものと考えている。
彼らは、自己の売り込みやネットワークづくりを生まれつき得意とする。
自分自身の最高の宣伝屋なのである。
■参考記事
内向型人間の楽になる人付き合い
内向型の自分で楽に生きる方法
生まれ持った内向性を大事に育む
内向型の人が楽に生きる方法
それぞれの光はどこを射すか
外向型の人は灯台のようだ。
その光は外へ、世界へと向けられている。
内向型の人はむしろカンテラに似ており、自分のなかで光を輝かせている。
自らの炎(エネルギー)をどのように集中させ、注意をどこへ向けるかの違いは、ことあるごとに両者の間に障害をもたらす。
しかしCさんの例でわかるように、仕事の場では問題はとりわけ大きくなる。
職場での内向型にありがちなことだが、Cさんは、セラピストが”光のしまいこみ”症候群と呼ぶ状態に陥っている。
職場での外向型にありがちなことだが、JさんはCさんの個性を見誤り(彼にはチームプレイができないと見なし)、その貴重な才能とスキルに気付かずにいる。
さらにCさんは、その内向的な気質ゆえに、自分の働きがジャックの目に見えないことに気付いていない。
これは、よくある行き違いの形だ。
光の輝きかたが外向型の人とちがうとはいえ、あなたにも、職場での評価を変えることはできる。
以下で、目立たない内向型人間が自らをアピールする法、外向型人間に言い分が届くようコミュニケーション・スキルを高める法、職場でのさまざまなストレスに対処する方法を紹介する。
また、内向型のボスについてもひとこと述べる。
これらのテーマのなかには、仕事だけでなく、生活のその他の場面でも応用できるものがあるだろう。
同僚や上司に自分の価値を知らしめるのは大事なことだ。
それをお忘れなく。
■参考記事
内向型と外向型、対照的な二つの性質
外向型はどのようにして文化的理想になったか
内向型、外向型のリーダーシップ
共同作業が創造性をなくす
内向型は生まれつきなのか
内向型人間が会議での存在感を表す
内向型人間はなぜ会議で発言しないのだろう?
ひとつには、彼らが大きな集団のなかで新しい情報を吸収し、それについて意見をまとめるのを苦手とするということがある。
彼らは会議を離れ、データをより分けて整理する時間を必要とする。
そのうえで、自らの考えや感情をよみがえらせ、付け加えなくてはならないのだ。
ひそかに、彼らは材料を混ぜ合わせ、独創的なアイデアや提案へと凝縮させることができる。
だがそれには時間がかかる(脳内のあの長い神経系の経路を覚えているだろうか?)
ちょうどワインをつくったり、パンを焼いたりするようなものだ。
それはせかすことのできないプロセスなのである。
第二に、内向型人間は、会議で皆の話を聞くために余分なエネルギーを使わなくてはならない。
彼らにとって、外界に集中することは、大量のガソリンを食う四輪駆動車を走らせるようなものである。
話すためのエネルギーは、ほとんど残らない。
発言して周囲の注意を引くことは、彼らをひどく消耗させる。
仮に発言するとしても、彼らは小さな声で、人と目を合わせず、とつとつとしゃべるだろう。
同僚たちは注意を払わないかもしれないし、「こいつはあまりわかっていないようだ」と思うかもしれない。
第三に、発言することは、多くの場合、集団のなかで内向型人間の感じる緊張をいっそう高める。
このことは、うまくしゃべるのをむずかしくする。
内向型人間は、心地よくくつろいでいるときでないと、すらすらと話せない。
集団内に対立があったり、他のなんらかの理由で刺激が過剰になったりすれば、”思考停止”におちいる恐れはさらに大きくなる。
彼らは言葉をさがすが、見つけることができない。
何度かこんなことが重なると、彼らはその恐怖を予期し、口を開くのをためらうようになる。
第四に、内向型人間は前もっていろいろ考えるため、発言のタイミングが遅れてしまうことが多い。
また彼らは、その異なる思考形式ゆえに、考えていることを途中から話し出したり、結論だけ述べたりする。
そして、発言のタイミングをまちがえたことや、少々周囲を混乱させたことに気付くと、自分は意見を述べるのがうまくない、黙っていたほうがよいのだ、と判断してしまうのである。
あなたが会議に参加していることを、同僚たちに知らせるには―
- 会議室に入っていくとき、なかのみんなに笑顔で挨拶する。退席時の挨拶も忘れずに。
- 会議室に入ったら、有利な席(すぐ休憩をとりにいけるドア付近)をさがす。
- うなずく、目を合わせる、笑顔を見せるなど、言葉以外のシグナルで、自分がきちんと聞いていることを周囲に知らせる。
- 何か発言する―質問してもいいし、だれかの発言を別の言葉で言い換えてもいい。
- 「ひとつ付け加えたいのですが・・・」「わたしの考えでは・・・」などと、きっぱりした声で切り出し、周囲の注意を引く。
- タイミングがずれたと思ったら、「あなたがさっき言ったことに、ひとつ付け加えたいのですが」などと切り出す。
- 翌日、メールを打ったり、メモを送ったりする。自分のアイデアに対する意見や感想を求める―「どう思いますか?」
■参考記事
内向型の人間がスピーチをするには
なぜクールが過大評価されるのか
内向型と外向型の考え方の違い
なぜ外向型優位社会なのか
性格特性はあるのか
内向型と外向型の上手な付き合い方
内向型をとことん活かす方法
内向型の人はさりげなく自分を売り込んでみる
なぜ内向型の人は、もっと自分を表に出したり、売り込んだりしないのだろう?
内向型の人は縄張り意識が強い。
彼らは、自分専用のまもられた空間を好む。
その空間のプライバシーを保つ唯一の方法が、世界へ見せるものを慎重に選び、それによって外へ向かうエネルギーを減らし、世界が自分へ向けてくるものを制限することなのだ。
内向型の人が他者に情報を分け与えないもうひとつの理由としては、多くの場合、彼ら自身ン自分の知識の深さに気付いていないということがある。
彼らは、想像力に富み、感情豊かで、きわめて知的な自らの生活を、当然のものとして受け止めている。
だから友人との間で特定のこと(たとえばセーリング)が話題にならないかぎり、自分がそれに関する知識の宝庫であることに気付かないかもしれない。
あるいは、自らの興味の対象があまり知られていない分野(たとえばパンダの繁殖)であることを知っていても、他の人はだれも興味がないだろうと思う場合もある。
そのうえ内向型の人は(特に仕事では)自分の意向を他人に伝える必要を感じていないことが多い。
なぜなら、仮に相手が上司なら、部下がひとつの仕事にどれだけの労力と時間を注いでいるかに当然気づくはずだと思うからだ。
内向型人間は、外向型人間の注意の払いかたが自分と異なることに気付いていない。
外向型人間には、内向型人間がどんな仕事をしているか詳しく話してもらう必要がある。
そうでなければ、何が行われているか外向型人間にはわからない。
内向型人間が内なる自分を表に出さない最後の理由としては、彼らが外に承認を求めていないことが挙げられる。
成果を評価されたいとは思うものの、注意を浴びるのは苦痛であり窮屈だ。
ちょうど黒板を爪でひっかく音のように、それは神経に障るおぞましいことなのである。
これらの要因すべてが合わさり、内向型人間は無関心で非協力的な印象を与えることになる。
それどころか最悪の場合、捨て石と見なされてしまうのだ。
露出過多だと感じることなく、自己宣伝するには―
- どんな種類の仕事やプロジェクトや業務に興味を感じるか、上司に伝える。
- グループ・プロジェクトに携わっているなら、時刻、場所、長さ、議事、出席者を決めて、自ら会議を招集する。
- 興味を持っている事柄について、社内報に短い記事を書く。
- 自分のあげた成果のどれかを上司に話す―「この前の問題、解決しましたよ。明日、報告書を出しますから」
- 肩の凝らないかたちで同僚と個人的な話をする。たとえば、コピーやファックスの前に並んでいるとき、自分の趣味を話題におしゃべりする。
- 会社の行事のとき進んで手伝いをしたり、病気の同僚に贈る花の代金を集めたりする。周囲はあなたを協調性のある人だと思うだろう。
内向型の人はゆっくり走ってレースで勝つ
内向型の人はたいてい、外向型の人よりペースが遅い。
このことも、内向型の人が淡泊で無関心に見える理由のひとつだ。
彼らは、エネルギーの蓄えを少量ずつ使っていかなければならない。
計算しながら小出しにしていく必要があるのだ。
さもないと燃料タンクは底をつき、彼らはへとへとになって燃え尽きてしまうだろう。
内向型の人は、物事をじっくり考え、仕事の経過を絶えず評価する時間をほしがる。
張り詰めた職場であれば、外向型の人は、内向型の人のペースが遅いのは、彼らが俊敏さや熱意や能力に欠けているからだと思うかもしれない。
内向型の人は、長い間をとりながらゆっくり話す傾向がある。
そのため、自分の意見に自信がなく、躊躇しているようにも見える。
だが実は、彼らは自分の考えをじっくり検討しているのだ。
さらに彼らは、意味を重んじるがゆえにつねに正確であろうとし、自分の考えを表すのにぴったりの言葉をさがそうとする。
しかしこのことは、外向型の人をひどくいらだたせる。
「さっさと吐き出しちまえ」と彼らは思うのだ。
また、内向型の人は、他者の意見もじっくり評価しようとする。
ところが、実は心の広さの表れであるこうした態度も、自らの意見に対する自信のなさと誤解されてしまう。
内向型人間はしばしば、思考のプロセスの説明を省略する。
このことも当然、多くの誤解を招いている。
同僚たちに、たとえペースが遅くてもレースに勝つのはあなただと知らしめるには―
- ときには感情的な反応を見せる―「あなたの案を見て興奮したわ、エリン。すばらしいアイデアね」
- 同僚たちに、自分が黙っているときは考えているのだと教える―「なるほど、いい目のつけどころだな。いまちょっと考えてみるからね」
- ある案件が取り上げられるとわかっていたら、すぐ発言できるよう前もっていくつかコメントを用意する(書き留めておくとよい)。
- よそのプロジェクトに関心があることを、その担当者に知らせる―「きみの仕事に関して、いくつか案があるんだよ、よかったら、Eメールで送ろうか」
- 時間が必要な理由を上司に説明して、期限を交渉する。
- 周囲に、自分の働きに対する意見や感想を求める。
職場でのコミュニケーション・スキルを磨く
会話は仕事を回していく。
さまざまなかたちのコミュニケーションが、豊かで革新的な職場環境づくりに貢献している。
ここでは、ともに創意を持つことがわたしたちの個性を融合し、個人ではなしえない成果を生むケースについて論じよう。
社員が言葉によらないコミュニケーションをマスターし、対立を解決する高度なスキルを持ったとき、そして、議論し、ブレインストーミングし、明快に要求を伝える能力を備えたとき、会社は成長し、存続する。
これらの分野におけるコミュニケーション術が強化されれば、その職場にはだれもが栄えうる土壌が生まれるだろう。
すべての職場は、社員同士のコミュニケーションのありかた次第でよくも悪くもなる。
内向型と外向型のちがいを何よりもすばやくくっきりと映し出すのが、両者のコミュニケーション方式のちがいである。
また、これほど誤解を生む恐れの大きいものもない。
どんなかたちであれ、コミュニケーションにはエネルギーが要求される。
口頭でのコミュニケーションにおいては、どんなふうに話し、どこに注意を払い、何を聞き、どう反応するかが問題となる。
内向型の人の多くは話すのが苦手だ。
他人との会話が、タンクの燃料をすべて要求するからである。
内向型の人は、話をする前に燃料を蓄えておかねばならない。
そして、実際に話しだし、相手にその場で反応すべく言葉をさがしていると、彼らのタンクはすぐさま空になってしまう。
研究によれば、実は人間が表現することの半分以上は―友好的か非友好的か、協力的か無関心かにかかわらず―言葉によるものではないという。
それは、ボディランゲージ―笑顔やしかめ面、ため息、手を触れること、指で机をたたくこと、目を合わせることなどで伝えられるのだ。
文書(またはEメール)によるコミュニケーションもまた、同僚にあなたの考えを伝え、自己をアピールする一つの方法だ。
メタコミュニケーションと呼ばれるこうした方式は、さほど燃料を消費しないので、内向型の人が職場でよりよいコミュニケーションを図るのに最適である。
あなたは自分の才覚をそっと誇示することができる。
また、同僚たちに自分について教え、なおかつ、あなたの”内エネルギー”を必要不可欠な会話のために取っておくこともできるのだ。
より少なく話し、より多くを伝えるには―
- 同僚や上司に挨拶するとき、笑顔をつくる。
- 会議の席やグループのなかで、話し手と目を合わせ、うなずいてみせる。
- 会ったときや別れ際、職場の仲間に挨拶の言葉をかける(あたりまえに思えるが、忘れがちなことだ)。
- 同僚にお礼状やEメールやEカードを送って、彼らの成果を讃えたり、好意への感謝を述べたりする。
- 同僚や上司が興味を持ちそうな記事をコピーし、メモをつけて送る。
内向型人間の対立を生産的に解決すること
対立は、相反するニーズがあればどこにでも生まれる。
世の中には、火花が散るのを見て活気づく人(通常、外向型)もいれば、争い事が嫌いな人(通常、内向型)もいる。
後者の人々は、それで闘わずにすむならなんでもする。
対立は彼らのエネルギーを消耗させる。
だから彼らは道をそれて、対立を避けようとする。
しかしたいていの場合、対立を無視するのはまちがいだ。
第一に、その対立は消えてくれない。
第二に、内向型人間は体のなかに―文字通り―ストレスが残っているのを感じる。
彼らは頭痛、腹痛などの不調に悩まされるのである。
対立はエスカレートしやすいので、早期に解決するすべを学んだほうがいい。
最終的に、あなたはもっと自信を持てるようになるだろう。
つぎの、対立を解決するためのステップを学習し、必要なとき活用しよう。
- 問題を明確し、それが問題であることに同意する。
- 自分の内向性と相手の外向性がその問題にどう影響しているかを理解する。
- 相手の視点から問題を見てみる。
- 内向型/外向型のものの見かたを念頭に、問題を解決する。
では、冒頭に登場した外向型の上司Jさんと内向型の部下Cさんは、ふたりの不和をどのように解決したのだろうか?
彼らは、そのコミュニケーションの大きな溝をどんな手段で埋めたのだろう?
ステップに従い、セラピストはまず、問題点を明確にし、それが問題であることに同意するようふたりにすすめた。
JさんとCさんは、自分たちの間に始終、誤解が生じることを認めた。
つぎに、セラピストたちは、内向型と外向型の異なる流儀―良い、悪いでなく、ちがい―について、また、そのちがいがふたりのコミュニケーションに及ぼす影響について、話し合った。
第三段階として、セラピストはふたりにお互いの立場に立ってみるようすすめた。
意見が聞きたいのに、Cさんは自分の考えを隠しているように見える。
そのため、Jさんはひどくイライラしている。
Cさんにはそのことがわかるだろうか?
会議の席でCさんは大きなプレッシャーを感じている。
だから彼はなかなか発言することができない。
Jさんにはそのことがわかるだろうか?
最後にセラピストは、お互いの態度を自分への攻撃ととらずに問題を解決することを、ふたりに求めた。
結果として、Cさんは自分にはオフィスのあわただしさからなるべく離れたスペースが必要なのだと気づいた。
そこで彼は、そうした仕事場をJさんに求め、与えられた。
Jさんは、Cさんがその場ですぐに答えを出すのが好きでないことを理解し、会議の前日に予定表を彼に渡すことに同意した。
これならばCさんは、検討する時間をたっぷりもらい、プレッシャーを感じることなく、よいアイデアを生み出すことができる。
Jさんは、彼自身は大嫌いで、他の人間がやりたがるとは思ってもみなかった、長期にわたる退屈なプロジェクトをCさんに任せることにした。
一方、Cさんは、自分の能力をもっとJさんにアピールする必要があることに気付いた。
そうすることで、彼も社内に確固たる立場を築くことができるのだ。
ときには、同僚とじかに問題を解決するのが不可能なこともある。
内向型のDさんはそうした状況におちいった。
きっかけは、彼女がとてつもなくおしゃべりな外向型の同僚、Aさんとスペースを共有するようたのまれたことだった。
Aさんは、Dさんに向かって、または、ひとりで、または、電話で、または、顔を出すあらゆる人とノンストップでしゃべりつづける。
そんな彼女と一日中一緒にいると、Dさんの神経はぼろぼろになった。
さらに悪いことに、Aさんのおしゃべりは仕事への集中の妨げとなっていた。
ところが、別のスペースに移りたいと申し出ると、上司はノーと言った。
理由は何かって?
彼はDさんの落ち着きや勤勉さにAさんが感化されることを期待していたのだ。
Dさんは途方に暮れた。
Aさんと角突き合わせる気にはなれない―ことに、彼女といっしょに狭いスペースに押し込められている現状では。
「絶望的だわ」Dさんはセラピストに言った。
彼女はひとりで解決策を見つけなくてはならなかった。
Aさんにおしゃべりな性格を変えろと言っても無理な話だ。
そのことでは、上司がすでに本人に注意している。
Dさんとセラピストはブレインストーミングし、彼女が正気を失わずにすみ、辞表を出す必要もない改善策をいくつか見つけ出した。
DさんはAさんに、静かな公園のような場所にいると仕事がはかどると言い、葉っぱの多い植物を並べてスペースの中央に仕切りをつくった。
そのさまは、戸外を思わせたし、Aさんに対する拒絶としてもさほど露骨ではなかった。
またDさんは、Aさんのひとりごとを聞かずにすむよう、仕事場にヘッドホンを持っていき、静かな音楽をかけた。
DさんはときどきAさんと話すことにした。
ただし、直接、話しかけられたときだけだ。
相手が宙に向かって話をしていたら、Dさんは答えない。
集中する必要があるときは、耳栓をしてもいいし、時間を指定してAさんにおしゃべりをひかえるよう頼んでもいい。
こうしてDさんはひどい疲労感から救われ、Aさんともいい関係を保っている。
対立は避けるのではなく、創意をもって解決すべく努めよう。
それによって、双方の職場環境、仕事上の人間関係がどれほど改善されるかに、あなたは驚くかもしれない。
舌戦を有利に展開するテクニック
研究により、内向型の人と外向型の人の議論のかたちはちがうことがわかっている。
外向型の人はしばしば、勝ち負けを決めるかたちで議論する。
彼らは、自らの正しさを強調する。
このため、相手方(多くの場合、内向型の人)はときとして、悪いことをした気分になる。
これに対して、内向型の人の多くは、双方が勝てるかたちで議論する。
彼らは両者が相手の言い分を聞くことを望んでいる。
通常、内向型の人はたくさん質問をし、あまり批判はしない。
自分の視点にはさほど固執せず、あらゆる見かたに正当性があるものと考える。
職場における外向型人間との舌戦は、かなりエネルギーを消耗させる。
彼らの好戦的なスタイルを個人攻撃と受け止めないこと。
つぎに、あなたの腕が上がるよういくつか助言をしておこう。
- 平静を保ち、呼吸を止めないようにする。
- 自分の主張に対する、予測される反論について、前もって考えておく。
- だれかが想定外の反論を持ち出したら、慎重に耳を傾ける。その反論を自分の言葉でまとめ、要約にまちがいがないかどうか確認する。(これによって考える時間を稼ぐことができる)
- 反論が正当なものなら、漠然と相手を褒める―「確かにそうです。その問題に対処する方法を考えなくてはいけませんね」
- 反論が続くなら、「どうすればうまく解決できると思いますか」とたずねてみる。
- 貴重なアイデアと反対する権利を自分が持っていることを忘れない。
内向型人間がブレーンストーミングを成功させるには
たくさんのアイデアを出すことが、ブレーンストーミングのねらいである。
よいアイデアとか悪いアイデアではなく、数多くのアイデアだ。
あなたのひらめきは、まったく新しいものをたたき出し、新機軸をもたらし、今日のめまぐるしい市場で生き残る力を会社に与えるかもしれない。
外向型の人はごく自然にブレーンストーミングを行なう。
彼らは、放電することで元気を得るのだし、なんの苦もなく話しながら考えることができる。
これに対して、内向型の人は、受け入れられている安心感がないかぎり、自由気ままにはなれない。
新奇なアイデアを出すことが多い彼らには、批判されないという保証が必要だ。
内向型の人は、他の人が放電している間はただ聞いていて、翌日アイデアを出すことにするといいかもしれない。
そうすれば、夜の反芻(熟考)タイムに情報を消化し、何か斬新なものを生み出すことができるだろう。
もしもあなたがブレーンストーミングを取りしきることになったら、生産的な環境をつくるために、つぎのようにするとよい。
<一回目>
- ひとつの問題、または、構想がリング内に投げ込まれること、だれでもアイデアや感想を出してよいことを説明する。
- ただ聞いていて、翌日意見を出す人もいてよいことを説明する。
- アイデアや感想はすべて書き留める。
- アイデアや感想はどんなものでもかまわず、正解、不正解はないことを明言する。
- 批判は厳禁だと告げる。
- 何か付け加えることがあればEメールを受け付けると言う。
<二回目>
- アイデアや感想をテーマごとに分類する。
- 会社の目標に従い、テーマに優先順位をつける。
- 結果について話し合う。
- いちばんよい三つの解決法を選ぶ。
- 代案を選ぶ。
内向型の人が上司に要望を出すときの注意点
たとえあなたが内向型だとしても、ときには上司に要望を出す必要に迫られることがあるだろう。
内向型の人の多くは、これを苦手とする。
要望を出せば、脚光を浴びるのみならず(これも彼らの性に合わないことだ)、エネルギーまで枯渇してしまう。
多くの人は頭が真っ白になって、何を言いたかったのか忘れることを恐れている。
あるいは、会議の場で、当意即妙に受け答えするのは無理なのではないかと案じたりする。
あなたがそんな問題を抱えているなら、つぎの作戦のどれかを試してみよう。
- 自分の要望を書き出す。具体的に書くこと。
- 上司の反論を想定し、それも書き留める。自分の側の言い分をメモする。
- 鏡の前で、あるいは、パートナーや友達を相手に、要望を述べる練習をする。(内向型の人の場合、話す内容に不安を感じるときは、練習したほうがうまくいく)
- 結果がどうであれ、要望を出した自分を褒めたたえる。うまくいかなかった場合は、いつでも再挑戦できることを思い出す。手法を見直せないか、上司の懸念を払拭する方法がもっとないか、考えてみる。
締め切りで不安にならないために
前に述べたように、内向型人間は〆切が苦手だ。
これは、プロジェクトを完遂し、なおかつ、圧倒されずに従来の仕事もつづけるだけのエネルギーを生み出せるかどうか、不安を覚えるためである。
彼らは、仕事をやり遂げるのになぜよけいに時間が必要なのか、上司に説明すべきなのかもしれない。
上司が内向型の人なら、〆切の問題を話し合うのは、さほどむずかしくないだろう。
柔軟な対応を求めてみよう。
つねに余裕を持たせるわけにいかないだろうが、もっと早く知らせてもらえばよりよい成果があげられると言おう。
〆切がいつであっても、まずはその仕事をひと口サイズに砕くことから始めるとよい。
これは、内向型の人にもっとも有効なやり方だ。
それによって、あなたは頭の混乱や不安や無力感を和らげることができる。
- まずカレンダーに期限を書き込み、それから仕事を小分けにする。〆切に間に合わせるには、いつまでに何をしなければならないかを計算する。
- カレンダーにそれぞれの日に達成すべきことを書き込む。自分のエネルギがピークとなる時間帯に、プロジェクトにあてる時間をとる(たとえば、日曜をのぞく毎日、午前6時~10時にする)。
- 予定外の仕事や邪魔が入る場合に備えて、スケジュールに余裕を持たせておく。
- 計画したことがその日に全部できなくても自分を責めない。つぎの数日分を合わせて、仕事を配分しなおし、続行する。
- つねに自分に報酬を与える―新しい本を買う、クッキーを食べる、テレビゲームで遊ぶ、など。
仕事中に邪魔が入ったら
中断を予期していた場合か、エネルギーが満タンなときは別として、邪魔が入ることは内向型の人にとって大打撃となる。
多くの場合、彼らはわけのわからないいらだちを覚える。
これに対して、外向型の人はひとつのことからつぎのことへ難なく移っていける。
思いがけない邪魔が入ると、彼らは活気づく。
自分があなたのデスクの前にひょっこり現れ、「ちょっと教えて」と言ったとき、なぜあなたが喜ばないのか、彼らには理解できない。
中断はなぜ、多くの内向型人間にとって痛手となるのか。
そこには生理学的な理由がある。
まず、内向型の人は考え事に埋没する。
そのため、なかなか浮かび上がってきて、別の話に応じることができない。
この過程を、外向型の人はしばしば無反応と受け止める。
我に返るのに1,2分はかかるため、あなたの頭は混乱する。
早口の外向型人間の話を、すぐには飲み込めない可能性さえある。
あなたはまず、なんの話なのかを把握しなくてはならない。
スイッチを切り替えるには、エネルギーが必要だ。
その後もとの場所にもどり、ふたたび集中するのにも、またエネルギーが要る。
ときには、自分のいた正確な場所を見つけるのに、数日かかることもある。
セラピーを受けている法律事務所を共同経営しているカップルがいる。
妻のDさんは内向型、夫のIさんは外向型だ。
Dさんは摘要書を書いているとき、他人に―たとえそれがIさんでも―部屋のドアを開けられると、イライラする。
Iさんのほうは、Dさんのオフィスに立ち寄ってあれこれ質問するのが好きで、彼女の冷淡さに憤慨していた。
わたしは彼らに、仕事の中断に対するふたりの態度がなぜちがうのかを説明した。
説明を終えると、Iさんは言った。「不思議だな。僕のほうは軽いおしゃべりで元気が出るのに」Dさんは喜び勇んで彼に言った。
「わたし、胸がすっとしたわ。人に邪魔されてあんなにイライラするのには、ちゃんと理由があったのね。これまで、どうして腹が立つのかさっぱりわからなかったのよ」
以下に、邪魔者や侵入者を退けるための戦略をいくつか紹介しよう。
自分なりの「ただいま面会おことわり」の標示をつくる。なるべくユーモアを交えよう。たとえば、漫画のキャラクターや「考える人」の絵を入れる、など。
すべての会話に制限時間を設ける―「木曜日に話しましょう。時間は十五分で足りますか?」
ドアに向かって歩いていき、会議に、もしくは、トイレに行くところだと言って、予期せね訪問者をさえぎる―「歩きながら話しましょう」
何をやってもだめなときは、隠れ場所―トイレ、休憩室や食堂の静かな片隅など―を見つける。
記憶が不得意な内向型人間はどうしたらいいか
Mさんは、新しい顧客に引き合わされ、ほんの数分後にその人の名前を思い出せない時、どんなに気まずい思いをするかをセラピストに語った。「机の下にもぐりこみたくなるわ」
研究により、内向型の人の多くは、名前や顔を覚えるのが苦手であることがわかっている。
事実、一部の研究者は、名前や顔をなかなか思い出せないことが、社交的催しや仕事のつきあいに対する彼らの恐れを助長しているものと見ている。
もしもあなたがこうした問題をかかえているなら、名前や顔を記憶に刻みつけるつぎのテクニックを活用しよう。
- 特徴をさがす―傷跡やほくろ、唇の形、癖毛、メガネ、髪の色。
- その人の名を鮮明なイメージに置き換える。
- 挨拶するときに、相手の名前を言う―「こんにちは、カーラ」
- 別れたあと、会場内を移動しながら、何度か振り返ってその人を見る。頭の中で、連想されたさまざまなことをその人の名と結びつける。
名前や顔を忘れても、自分を許してやろう。
だれしもときには、物忘れをする。
仕事でストレスを感じたときの五つの解消法
刺激過剰になり、圧倒されているときのわたしたちは、ものが考えられず、創造性も発揮できず、あまり生産的ではない。
心を鎮める方法を学ぶことはきわめて重要だ。
1.体の状態をチェックする
緊張を解くための第一段階は、”体”と”心”を切り離してみることだ。
もちろん口で言うほどたやすくはないが、必ずできるようになる。
あるセラピストはまず、体がどんな感じなのかをたずねる。
「〇〇さん、体の状態を教えてちょうだい」
相手がこの質問に答えられないようなら、重ねてこうたずねる。
「腕はどんな感じ?手はぴりぴりしている?それとも、しびれている?緊張している?重たい感じ?肩をゆすってみて。硬くなっている?」たいていの場合、これらの質問が呼び水となり、クライアントは不安(ぴりぴり、緊張、焦燥感)や憂鬱(重たさ、疲労、だるさ、緩慢さ)の身体症状を語りはじめる。
自分や他人に体の状態を語れるようになればなるほど、自らを救うあなたの能力は高まるだろう。
2.呼吸をし、水を一杯飲む
第二段階は、酸素を取り込むことだ。
呼吸を意識しよう。
たいていの人は、刺激過剰となったときは息を止めている。
だからお腹に息を吸い込み、吐き出そう。
呼吸が深くなってきたら、全身の筋肉を緊張させ、一分間その状態を維持しよう。
リラックスしているときと緊張しているときのちがいに注意すること。
つぎに、冷たい水を一杯飲もう。
研究の結果は、ごく軽い脱水症でも、集中力、思考、代謝、神経伝達物質の流れに影響を及ぼすことを示している。
『高エネルギーな暮らし方』の著者、ロバート・クーパー博士は、「水分は全身のエネルギー産生を促進し、脳と感覚を活性化させる」と述べている。
3.頭のなかのひとりごとに注意を向ける
”被圧倒感”を緩和するための第三段階は、頭の中で続いているひとりごとに注意を向けることだ。
体に特定の感覚があるとき、わたしたちはそこに意味を結びつける。
このような意味づけは子ども時代に始まるので、大人になるころには自動的に行なわれるようになっている。
たとえば―お腹が硬くなっている。
それに対する無意識の反応は、恐怖だ。
恐怖は危険を意味する。
危険は、なんらかの災いが迫っていることを意味する。
つぎに起こる現象は、たいてい意識される。
頭の中で声が言うのだ-わたしにはできない、きっと失敗する。
この声は、最初に感じた恐怖をさらに募らせ、あなたは麻痺状態におちいる。
内向型の人の脳には、圧倒されたとき刺激を抑制するためのメカニズムがあるのだ。
クライアントたちは怯えた声で訴えてくる。
「何も考えられないの。きっとプレゼンテーションでも、質問に答えられないわ」
頭の中の声に注意し、その言葉に耳を傾けよう。
それを恐怖を鎮める穏やかな声に変えることを覚えよう。
「わたしはただ不安なだけだ。きっとうまくいく」「私は緊張している。だからって悪いことが起こるわけじゃない。きっと大丈夫だ」
4.成功例を思い出す
第四段階は、過去の成功体験を思い出すことだ。
圧倒されると、わたしたちは知っていることまで忘れてしまう。
クライアントのAさんが、講演を前にしてひどく不安がっていたとき、セラピストは彼女に、プレゼンテーションで質問を巧みにさばいた過去の経験についてたずねてみた。
「ええ、たしかに」彼女は答えた。
「思い出したわ。前にはちゃんとやれたのよ」
「頭の中が真っ白になったら、どうすればいいと思う?」そうたずねると、彼女は答えた。
「ちょっと考えさせて、と言うわ。でなければ、他の人に、そういう問題にぶつかったことがないか聞いてみる。そのときどうしましたかって。全部の質問に自分で答える必要はないのよ」
「それともうひとつ」セラピストは言った。「こう言ってもいいのよ。きっと家に向かう車のなかで、いい答えが浮かんでくるだろうけれど、いまは、何も思いつきませんって」自分に言い聞かせよう―あなたには、心身の被圧倒感に対処する力がある。
前にやったことがあるなら、もう一度できるはずだ。
5.圧倒されることのメリットを理解する
圧倒されるのは、内向型であることの一部だ。
自分を責めてはいけない。
それは、あなたの貴重な特質の一つであり、あなたがたくさんの情報を取り込んでいること、あなたの脳が活発に働いていることを意味する。
そのことを思い出そう。
内向型人間が管理職になったら
内向型の人の多くが人の上に立っていると知ったら、あなたは驚くかもしれない。
彼らはしばしば、指導者にふさわしい資質を見せる―公正さ、的確な判断力、むずかしい決断を下す力、ユーモア、知的好奇心、過去・現在・未来を俯瞰する能力。
上司が内向型であれば、多くの面で仕事がしやすいだろう。
しかし逆に、頭の痛い問題も生じうる。
内向型の上司は、自分の希望を伝えるのを忘れるかもしれない。
職権の委譲を怠るかもしれないし、褒めることや報酬を与えることの重要性に気付いていないかもしれない。
かつてセラピストのBさんは、内向型の上司の下で一年以上働いたことがある。
Bさんがあまり指導を必要としないたちなのは、ラッキーだった。
Tさんと直接会ったのは、たしか二回だけ―ほとんどの場合、彼女は文書で連絡をとったのだ。
Bさんのつくったトレーニング・マテリアルについてコメントを書き、学生たちがBさんに与えた評価についてメモをよこす。
それだけだった。
外向型の人ならたまらなかったと思う。
彼らなら、もっと多くの援助や意見、もっと多くのミーティングを求めただろう。
その一年、スタッフ・ミーティングはただの一度もなかったと思う。
あなたが内向型でも外向型でも、このタイプの上司とうまく仕事をするためには、Eメールやメモや文章で絶えず現状を知らせることだ。
もっと意見がほしいなら、そのように伝えよう。
内向型の上司は、その必要はないと思っているのかもしれない。
本人が外の力にあまり左右されないため、彼らは、部下の多くが励ましと委任を必要としていることに気付かないのだ。
研究の結果は、内向型の管理者が外向型の管理者ほど簡単に権限をゆだねないことを示している。
もしもあなたが内向型の上司なら、以下の点に注意し、外向型は内向型とはちがうところから動機を得ることを心に留めておこう。
<自分の希望を伝える>
- 希望を詳しく述べ、文書にしよう。
- 部下に意見や感想を求めよう。
- 自分が部下のどこを買っているか、また、どんな点を改善してほしいと思っているか、本人たちに伝えよう。
<権限をゆだねる>
- 少しずつ責任を増やしていって、部下たちに権限を与えよう。
- 自分がどれほどたよりにしているか、部下たちに伝えよう。
- 提案、アイデア、解決策を求め、そのいくつかを実行に移そう。
- 部下たちの後ろ盾となろう。よい考えは奨励しよう。
<個々に合った動機づけと報酬を与える>
多くの研究によれば、部下に動機を与えるもっとも効果的な方法は、その功労を認めることだという。
これは、単なる昇給や昇格よりも複雑だ。
つまり、その人間に合った報酬をみつけなくてはならないのである。
内向型の人を動かすものは、外向型の人とは異なる。
外向型の人は、賞賛、報酬のチャンス、表彰(”今月の成績優秀者”など)、コンテストといった外からの強化によって動かされる。
これに対して、内向型の人は、脚光を浴びることを好まない。
彼らは注目の的となることを、喜びではなく苦しみとして受け止める。
これは、周囲からの承認や意見に反応しないということではない。
それが過剰な刺激とならないかぎり、彼らはちゃんと反応する。
ボブ・ネルソンの著書『ほめよう はげまそう1001の知恵』(かんき出版)には、部下を認めるとき何が重要かが示されている。
- ひとりひとりが何によって動機を得るかを知ること
- 個々人に合った動機づけを考案すること。これは関係者全員にとって楽しく、得なことかもしれない。
- その人に合った報酬を与えること。
- 功績に合った報酬を与えること。
- 具体的、かつタイムリーであること。
内向型人間は仕事を楽しむことを知ること
ここでは、九時から五時までの世界で内向型人間を待ち受ける数々の落とし穴に着目してきた。
しかし、それらの脅威にもかかわらず、内向型の人々は仕事を楽しんでいるし、多くの場合、仕事は彼らの生活に大きな比重を占めている。
事実、オックスフォード・ハッピネス・プロジェクトの最近の研究により、幸せな内向型人間は幸せな外向型人間よりも仕事を楽しんでいることが明らかとなった。
内向型の人々が、一日の終わりにへたばることなく他者と交わるすべを学べば、彼らはその”内エネルギー”によって会社にめざましい利益をもたらすことができる。
だから、自分に合ったやり方で”能力を誇示する”ことを忘れてはいけない。
結局のところ、あなたにはその貴重な働きにより、評価され、感謝される資格があるのだ。
どんな組織も内向型人間なしにはやっていけない。
本人たちが気付いているとはかぎらないが、外向型の人々にはわたしたちが必要なのだ。
そのことを彼らに教えよう。